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エージェント・ウルトラのJIZEのレビュー・感想・評価

エージェント・ウルトラ(2015年製作の映画)
3.3
極秘プログラム"MKウルトラ計画"を題材に田舎町のコンビニ店員が謎の暗号を告げられ突如CIAエージェントに覚醒を遂げるスパイ調なラブコメ映画!!まず主演2人が『アドベンチャーランドへようこそ(2009年)』以来の約7年振りに再共演を果たしスパイ路線に着手した事自体がウルトラ級に歓喜物で感動した。ただ,観終れば結局プロポーズ目的で製作されたスパイ映画⁉︎とかCIA側が狙う最終的な目的性が曖昧..などスパイが副題で超人アクションが本題な後付け感はどうなんでしょう..という。MKウルトラ計画の具体的な全貌は続編に持ち越しかな。。実際にサル漫画「APOLLO APE & CHIP THE BRICK」も読みたい。スパイ物特有な複雑構造は隅に放置し主演2人の成長した演技幅を堪能やサラッと観て楽しむ分には最適なスパイ映画だと

開幕,手錠を繋がれたマイク自身が3日前に記憶を遡る留置場(の場面),スライド式に起承転結の結(最後)から起(最初)に映像が遡り事態の非常性を潜在意識に植え付ける"サブリミナル効果"は冴え渡り見事な演出に思えた。昨年だと大絶賛した『ピエロがお前を嘲笑う(2015年)』でも利用され導入部の切り口を格好良くお洒落に起動させる主流なアイディアも加点要素である。また(同じ場面で)①ちりとり②スプーン③ヌードル④クマ⑤サルの漫画本,など冒頭で断片的に証拠写真を観客に提示した事で"対象(示唆)"が潜在意識に埋め込まれ場面単位をデフォルメさせる効果(演出)も旧式だが割と気が利き痛快な場面でしたよ。主演2人のファンであれば相思相愛なバディ感が群を抜き間違いなく観るべき作品な事は間違いない。溺愛し距離感が常に近いベタな恋愛場面も含め妙な多幸感がある。

観終わり何が1番秀でた部分なのか考えた結果,主題のコメディ調なスパイ要素より主役マイクとフィーバーの片方が欠けても成り立たず両者が補完し合う"親密な均衡性"バディ感に映画1番の醍醐味を覚えた。ただ設定的に苦言を呈せば,(2人の関係性が)序盤,破局寸前から関係性が始まれば後半部に向け俄然"惹かれ合う"逆転調な抑揚を味付けできたのに..とか。グラグラ対極に揺さぶられる恋愛法則の原理はこの映画になかったですね。とにかく貧乏譲りが癖で冴えないダメ男を影から支え唯一無二な理解者を貫き通すフィーバーと危険を顧みず彼女を死守し守り通すマイクの整合性は両者演じる俳優が美男美女という皮肉目線を含めても直視し難い程ではなく恋愛色濃い目なスパイ映画とし整合性が取れてたと思う。まあ全体的に王道路線だよ。

概要。『アドベンチャーランドへようこそ』で共演したジェシー・アイゼンバーグとクリステン・スチューアートが7年振りに再共演を果たしたスパイ・ラブコメディ。監督は『プロジェクトX(2012年)』のニマ・ヌリザデ監督。また本作はCIAが極秘実験として実際に行ったとされるマインドコントロール・プログラムを元に着想を得て映画化された

まあ娯楽感覚で楽しむ分には最適なラブコメ映画だとは思う。これ以降で若干ネタばれを踏みますが,中盤,マイクの真正体を通じ現在迄に管理され続けてきた国家規模を揺るがすマイク自身の"ある謎(覚醒の原因)"が解明されるのですが,正直事態の異常性を知っても知らなくても映画自体のベクトルが恋愛方向へと既に転換してるので噛み合わせが最悪に感じた。二頭を追うものは一頭も得ずとはまさにこの事..。つまりCIA側の内部的な(詳細が露呈されない)不透明性が致命的に度を越し展開が進んでも結果的に彼等の目的みたいな狙いが不自然で否めなかった..要するに組織自体がマイクを利用した理由の論理性がニゴされ曖昧なんですよね。マイクの幼少期を描く事で作品自体に余裕を持たす演出もしなければ組織自体の背景も有耶無耶に終始..目先の(アクション,恋愛,ガジェット,新鮮味など)カタルシスに集約性を置き過ぎた故に空洞だらけな構造と化し根本的な敗因だと感じましたね。俳優自体もフレッシュ!題材も昨今主流なスパイ物!音楽面も最高に痺れ狂う!!..ただ肝心の具体的な中身が微動だにせず論理的な充足感を帯びない。目先の映像を楽しめる方限定での粗が目立つスパイ映画に

俳優面。
マイク役の主演ジェシーアイセンバーグで言えば『ゾンビランド』のダメ男を彷彿とさせコンビニ店員のあの感じが抜群にハマってるわけで不毛な覚醒前と超人的な覚醒後の対比を見比べる面でも役者的に幅が効き彼ならではのカメレオン的な醍醐味を成した。あとフィーバー役のクリステン・スチューアートで言えば側から見れば姉御肌な強気女性なんだが内面に弱さを抱え女性的な部分を時折垣間見せる場面は彼女ならではの妖艶な味が醸し出され瞳に惹き込まれる。何よりマイクが覚醒を遂げると同時にナゼかフィーバーも攻撃性を増し人格が変貌する相乗効果の発揮もやりたい放題に暴れ最大の見所。

終盤,マイクが突如アナフィラキシー症候群を発症させ苦言を呈す場面でも展開の進捗度合いが測れず急性すぎたためマイクに感情移入が追いつかなかった..ここでも背景部を削ぎ落とした構造そのもののアラが浮上する。(観客が抱く)恐らく原因自体は唐突な"覚醒による副作用"なんだろうけど映画全体に最後まで細部を説明する気がないのかエクスキューズが尽く抜け落ちている...細かい部分も掘り下げないので興味が若干途切れた....

総評。
後日譚もあの程度の映像では結果的に不必要かな...。エンドロールのアメコミ調なイラスト演出で幕を閉じた方が展開的に綺麗だと感じた。また最後に公衆の面前でマイクが指輪を差し出しプロポーズする場面も完璧にコメディ調に転化し方向性的にどうなんでしょう笑..あとフライパンの角度を利用し敵を撃ち抜く場面やカップ麺で火傷の傷を負わしスプーンで頚動脈を切り裂く場面など近距離で繰り出されるアクション演出の外連味も言わずもがな視覚的に唸る部分はありこういう白熱した絵で魅せる場面は炸裂してます。ただ最終決戦の場が限定され深刻に繰り広げる大一番な描写な筈が小規模的なアクションに終始する小粒感は頂けない。全体的にドタバタ活劇と称せば確かに理に敵う構造で後にも先にもダメ男が超人的な能力を駆使し彼女を窮地から救い出すラブコメ部分に大部分の集約性が置かれているように感じた。クリステン・スチューアートの官能芝居をプッシュした監督に「FUCK YOU!!」と罵ってやりたい(褒めてます)。少なくともマイクが覚醒を遂げる理由が解明される以前の前半部は異常事態に巻き込まれる唖然感が配され絶賛したい。(映画界を賑わす)若き主演目当てであればウルトラ級に本作を劇場でお勧めします!!
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