Omizu

夏をゆく人々のOmizuのレビュー・感想・評価

夏をゆく人々(2014年製作の映画)
3.8
【第67回カンヌ映画祭 グランプリ】
『幸福なラザロ』アリーチェ・ロルヴァケル監督作品。監督二作目にしてカンヌ映画祭グランプリを受賞、今勢いに乗っている女性監督である。一家の母役には実の姉であるアルバ・ロルヴァケルを起用している。

素晴らしい。長編二作目でここまでの完成度とは。『幸福なラザロ』『無垢な瞳』とここ最近の勢いは凄まじい。本作も既に田舎家族ものとしての完成度が高い。

養蜂を営む一家、テレビ番組、更生対象の男の子、不協和音が次第に大きくなっていく様を見事に捉えている。

主人公は一家の長女であるジェルソミーナで、彼女の成長譚としても出色の出来。それまで父親に従い養蜂以外のことは知らない彼女であったが、外の世界に触れることで自立を考えるようになる。

この父親の描写が絶妙。家族を愛しているのは間違いないのだが、強権的に家族を縛り付けようとする。目力がほんと半端じゃない。何も言わなくても目が怒っているのが一発で分かる。怖い。

大人の女性への憧れを抱くシーンが心苦しい。

終わり方も秀逸。あえてスッキリするラストにせず、これからの可能性というのを暗示する。一夏の家族の危機を乗り越え、彼女は自信をつけたように思える。
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