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マップ・トゥ・ザ・スターズのhasseのネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます

難解かつトピックが放射的であるがゆえの散漫さが目立つ作品ではあるが、クローネンバーグの演出×ピーター・サシツキーのカメラワーク×ハワード・ショアの音楽が三位一体となって構成する、独特の不気味さと静謐さが共存する映像の中毒者なので、満ち足りた気分で観終わった。

ハリウッドの表と裏、光と闇。映画脚本のため偽善で難病の少女を見舞うベンジーと、子供時代の虐待を「持ちネタ」にしてメディアでしゃべるハバナ。虚飾は亡霊を招き寄せ、二人を苦しめる。突き付けられる現実から逃避すべく、ベンジーは薬物に手を出し、ハバナはセラピーにのめり込む。薬物治療上がりの子役ベンジーと、落ち目のベテラン女優ハバナというハリウッドコミュニティの中心部にいる二人は非常によく似た存在である。
中盤、ハバナのメイドとして雇われるアガサの介入により親への愛憎、コンプレックスというテーマが加わってくる。継父による虐待から守ってくれなかった母親への恨みと相反する愛を持つハバナ。実の兄妹同士で結婚してしまった両親の闇を知りながらも、自分も弟と結婚することに妄執するアガサ。二人は全てを燃やし尽くす火のイメージに囚われ、共鳴する。ライバル女優が息子の溺死にショックを受け降板したニュースを受け、「彼らは水、私たちは火」と手を取り合いダンスするシーンはハバナが劇中ほぼ唯一見せる幸福感に溢れているが、魔術的な不気味さが共存するゾクゾクする場面だ。
ある対象への未分化の愛憎感情と、その対象に「なりたい」という感情。後者は『M・バタフライ』でも描かれていたが、本作ではより複雑化し、多声的なつくりになっている。

ミア・ワシコウスカ演じるアガサの不気味さとキュートさ。父親のスピーチ映像をバックに謎ダンスするワンショットが可愛い。
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