アメリカの名もなきヒーローの物語、と思われがちだがクリント・イーストウッドが本当に描きたいのはそうしたヒロイズムではなく、それぞれの正義に従って自分がやるべきことをやる、という多様性だろう。
クリス・カイルから見た守るべきものと奥さんから見た守ってほしいものの視点の違い、クリスとムスタファというふたりのスナイパーの反対側から見た視点ーーそのどちらも正義だよ、ということが静かなメッセージとして伝わってくる。
「自分で判断しろ」という指令が、心に刺さる。
実話だからこそ過剰な感情移入を排除しつつエンターテイメントとして成り立たせているのは流石だし、ストイックに役に徹するブラッドリー・クーパーも素晴らしかった。
