尿道流れ者

アメリカン・スナイパーの尿道流れ者のレビュー・感想・評価

アメリカン・スナイパー(2014年製作の映画)
4.0
イラク戦争において英雄、伝説として君臨した1人のスナイパー。そんな彼も家庭との軋轢や精神的な浮き沈みを覚えてしまう。
戦地に毒されて無慈悲になり、派遣から家に戻っても戦地に思いを馳せてしまうようになる。殺戮マシーンとしての彼、しかし本来は陽気な良き父であり、爽やかな男である。彼が仲間の死を経験したりすることで、少しずつ人間の心を取り戻していく。

銃撃戦の緊張感や一つ一つの建物をクリアしていく描写はとても面白く、揺れるスコープの視点などかっこいい映像で溢れている。砂嵐のなか光る銃口からの光とか凄く良かった。
その格好良さがアメリカでは愛国心を煽って人気だったりするのだろうが、この映画は紛れもない反戦映画。

アメリカンスナイパー。アメリカの、アメリカ目線の、アメリカでは偉大であるスナイパー。その姿を素晴らしく格好良く描いている。しかし、同時に敵側の心情や家庭を想像させるような描写もあり、ただの英雄賛歌とは受け止められない。敵の行う残虐な行為も実は主人公の行動ともリンクしていたりもする。たくさんの被害者も映され、その後の悲劇も逃さない。
主人公は伝説と周りから言われても、どこか虚しく表情をする。国を護るためという主人公の戦いにおいて、殺した数で崇められることは意味のあることではない。それではただの残虐な戯れのようなものだ。しかし、彼はアメリカにとって伝説となった。国のために戦ったというよりも、何人を射殺したかということで。アメリカの戦争はまだ終わりそうもない。