モンティニーの狼男爵

365日のシンプルライフのモンティニーの狼男爵のレビュー・感想・評価

365日のシンプルライフ(2013年製作の映画)
3.6
フィンランドの監督が、失恋をきっかけに全てを0にしたいという思いから、家にあるモノを片っ端から倉庫に預ける。ルールは3つ。

①1日1つ倉庫からモノを取り出せる
②1年間続ける
③1年間何も買わない

実験と称するこの体験から、如何にモノは不要か、本当に必要なモノは何かを自分自身に問い質していく。

この人の真面目なとこ(アホなとこ)は、実行日に服はもちろん下着すらも倉庫にぶち込んでしまうのだ。
第1日目に倉庫に行く際は、夜な夜な人気のないことを確認し、落ちてた新聞紙でイチモツを隠しながら雪の中を小走りに倉庫へ向かう。正直、滑稽だった。

何かもうすぐ本作からインスピレーションを受けた、モノを奪われた男たちの100日間をドイツがサスペンスチックに映画化したやつが公開されるみたいだけど、そういうことじゃないと思うんだよね〜(・ω・)

私自身が今住んでる部屋はとてつもなくゆとりがある。
半年ほど前に引っ越しをして、コロナ禍に陥り、金銭的余裕がないからという単純な理由だが、ほとんどモノがない。
布団と座椅子、折りたたみテーブルくらいしかないリビング、洗濯機や冷蔵庫はあるがオーブンや電子レンジはない。
なんとも殺風景な部屋だが、不思議なことにこれが気に入っている。多分、掃除が楽だからだ。
もちろんベッドは欲しいし、本棚やお洒落なイームズチェア、座って作業できる机やパソコンだって欲しい。
ただ、それらの欲しいと思えるモノが無くても、割とストレス無く過ごせている。

「人生はモノでできてない」

どっちかと言うとあった方が便利というモノに溢れて、人が人として生きるのに必要なものをどこか見逃しがちになる。今はそんなお節介な世の中何だろうなと、本作を見て思った。

もし明日、『世界から猫が消えたなら』の様に、朝起きたら【映画】がこの世から消えてたら、私はどうなるだろう。
多分、退屈だし落ち込むんだろうけど、生きてはいける気がする。
映画はよく見るけど、一定数いるであろう映画に生かされてる側の人間とは、私は違う気がする。

ただ、人間的生活って、息さえ続けば良いという訳ではなくて、無駄な事に意味を見い出せるような、無意味だからこそ価値があると感じられることが、野生動物と文化的生活の違いなんだろうなと思う。

本作の実験は(やったところで…)なのかもしれないけど、すごく有意義な時間だったや。