黒木和雄の実験精神溢れるロックな作品
早川義夫のラブ・ジェネレーションから始まる導入部から当時の日本映画としてあまりに斬新なものがあったし、佐藤慶の一人二役も途中からどっちがどっちの佐藤慶か曖昧になってベルトルッチの分身的様相を呈していてぶっ飛んでいたし、極め付けが岡林信康のアドリブ演技と唄も全く意味が感じられないのに劇薬的スパイスとして良い味つけになっていてとにかくロックだった
加えて中盤の肝となる事件の場面とそれをインタビュー的に説明する声が挿入されたシーンに代表されるように、画面と音の乖離があったり良い意味でリアリティに拘っていない録音箇所が目立ち、それがただのヤクザ映画にはない幻想性や超現実性を齎していて素晴らしく、この映画を他とは違う唯一無二の作品たらしめている
こういう固定観念に囚われない自由な映画が沢山あったATG全盛の時代は本当に良かったなと改めて思うのだけど、ATGが無くなって以降インディーズ作品においても自由性を喪失した映画ばかりになってしまったのは本当に残念に思うし、この映画みたいな奔放な作品がもっと増えたら日本映画も面白くなるのだけれど