安堵霊タラコフスキーさんの映画レビュー・感想・評価

安堵霊タラコフスキー

安堵霊タラコフスキー

ウーマン・トーキング 私たちの選択(2022年製作の映画)

4.0

女性らが村での進退について討論する12人の怒れる男みたいな作品。

あらすじとして記されているんで言及するけど、最初は女性らの服装から産業革命以前の話かと思っていたら途中で2010年の話だと明かされる
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怪物(2023年製作の映画)

4.7

このレビューはネタバレを含みます

映画史において羅生門以上に藪の中スタイルを有効活用した作品として見事に思え、主体となる人物が変わることによって人物の見方も変わってくる様子が白眉でカンヌ脚本賞も納得。

役者陣の演技も人間性が良くも悪
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暗闇の秘密(1949年製作の映画)

3.9

ロナルド・レーガン主演の結構レアな作品って程度の理由で鑑賞したけれど、ドン・シーゲルが助監督として関わったハワード・ホークスの色を最も濃く出した映画にも感じられて悪くない味わいだった

男女が互いの問
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屋根の上のバイオリン弾き(1971年製作の映画)

4.1

このレビューはネタバレを含みます

19世紀末のユダヤ教徒の村での暮らしに焦点を当てた珍しいミュージカルという程度の印象から始まったのに、途中から不穏だったとはいえ村で軍の弾圧に遭って主人公らが住めなくなる終わり方とは思わず驚いた作品。

ベツレヘムの星(1945年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

いつもは冷淡で薄情であろう人物が出産のときだけ献身的になるっていう現金な話という印象だったのだけれど、紳士的浮浪者にコーヒーを与えるときの主人公の所作みたく演出的に巧みなところもあってか非常に好意的に>>続きを読む

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

4.1

全編通して初めて言わんとした内容がなんとなく掴めるような作品。

しかしカメラが近いギヨーム・ブラックとも形容できる演出と映像のスタイルにより、単なる親子の束の間の交流という話であっても詩的に感じ取れ
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自由の代償(1975年製作の映画)

4.8

演技に演出に画面作り、どれを取っても一級品なファスビンダーの才気がこれでもかと煥発した、謂わばファスビンダー版市民ケーンみたいな作品。

同性愛描写の癖がちょっと強いこと以外欠点らしいところが見当たら
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Luis(原題)(2008年製作の映画)

4.7

しかしこんな常軌を逸した悪夢的空間を形成して映画を撮るなんて、いくら短編とはいえ作ってて気が触れちゃいそうな気がするから監督らが心配になる。

シュヴァンクマイエルとかクエイ兄弟とかに近いものを感じる
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Lucía(原題)(2007年製作の映画)

4.7

ヤン・シュヴァンクマイエルとブラザーズ・クエイを合わせたかのような、しかしそれでいてタイプのまるで違う不気味さが漂う色々と恐ろしい短編作品。

それにしてもこんな常軌を逸した悪夢的空間を作って映画を撮
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里見八犬伝(1983年製作の映画)

2.5

戦闘描写とかに見応えのあるものは多かったけれども、美術とか音楽とか演技とか展開とかがかなりちゃっちく苦笑もので、現代に見られる学芸会的とも揶揄される邦画の源流みたいなものを感じてならなかった。

アダマン号に乗って(2022年製作の映画)

3.4

日本映画でもないのに日本で金熊賞作品を先んじて鑑賞できる貴重な機会ではあったけど、フレデリック・ワイズマンとクロード・ランズマンの作品を足して緩くしたような会議やインタビューを主体としたスタイルだった>>続きを読む

ピール(1982年製作の映画)

3.5

短編パルムドールを受賞したジェーン・カンピオン初期の短編映画で、低予算ながら不思議なインパクトのある一幕家族ものといった様子の作品ではあるけど結局何だったのかが謎。

大いなる勇者(1972年製作の映画)

3.7

この時代らしくアメリカンニューシネマ然とした虚しさとか切なさが漂う西部劇。

ロバート・レッドフォードらの淡々とした生活描写や対比的な激しい戦闘描写等見所はそこそこあったものの、同年のカンヌで言うとこ
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TAR/ター(2022年製作の映画)

4.3

天才芸術家が(主に同性間の色恋沙汰による)身から出た錆で破滅する様子を描くという点ではありがちに思える内容ながら、ケイト・ブランシェットらの演技力や以前とはガラっと変えた監督のヨーロッパ映画的スタイル>>続きを読む

三人の女(1977年製作の映画)

4.0

イメージズから5年程度の感覚を空けてアルトマンが撮った、ベルイマン的女性映画。

アメリカの映画だから当然とはいえ結構アメリカらしい場面が多く、イメージズよりヨーロッパ映画的な質感に乏しかったので好み
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EO イーオー(2022年製作の映画)

4.8

ロバを始めとした動物に対する人カスのエゴを、サイレント映画を思わせる実験的映像を駆使しながら描写した意欲作。

バルタザールどこへ行くをモチーフとしながら、ロバのEO君を巻き込む人間の愚かさが現代的に
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ストレンジャー/謎のストレンジャー(1946年製作の映画)

4.5

オーソン・ウェルズ主演のサスペンスとして真っ当が過ぎる内容ではあったものの、構図や演技で魅せる力が流石と言わざるを得ないくらい凄まじいので見応えは抜群の作品。

カラビニエ(1963年製作の映画)

4.2

60年代のゴダールらしく戦争を滑稽にそしてやんちゃに皮肉ってみせた様子が心地良い作品。

暴太郎戦隊ドンブラザーズVSゼンカイジャー(2023年製作の映画)

3.9

一時期の仮面ライダーMOVIE大戦みたく二つの戦隊各々の話をして最後に合流させる手法を取っており、それはそれでどっちも持ち味を活かした変さがあって良かったのだけれども、どうせなら個の強さを混ぜ合わせた>>続きを読む

東から(1993年製作の映画)

4.2

他の人も言っているように長いとも思ったけれども、ストローブ=ユイレとアンゲロプロスを合わせたような長回しの質感がある場面が多かったから個人的にはかなり好印象。

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー(2023年製作の映画)

4.5

マリオを主役にした映画として完璧とも言える形に仕上がった作品。

ゲームシリーズのリスペクトやオマージュは当然として、娯楽映画のフォーマットに則って「何故ヒゲ面のおっさんが世界的に最も有名なゲームキャ
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ザ・ホエール(2022年製作の映画)

4.3

主人公のビジュアルの破壊力と演者の高い演技力で魅せるタイプの演劇を映画として昇華した作品。

人間の悲しい愚かさについての家族の物語という意味でも、セールスマンの死や欲望という名の電車に近いものがあっ
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故郷の便り/家からの手紙(1977年製作の映画)

4.5

少しストローブ=ユイレやマルグリット・デュラス的な趣のある実験性の強い作品。

風景と手紙の朗読だけで構成されているので80分程度でも長さを感じるが、電車の中とか同じようなシーンを繰り返す試みがされて
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一晩中(1982年製作の映画)

4.2

70年代から80年代にかけての所謂アート系?映画でしか摂取できない栄養がしっかり含まれているという点で良質な作品。

どんな話だったかはあまり記憶に残らないけれども、タイトルの通り夜の場面が多いことも
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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

4.5

これまでに無い斬新で変わったアプローチによって家族愛を描いた映画として歴史に名を刻むこととなった作品。

描き方や描写がかなり独創的なので好き嫌いが分かれるのは仕方のないところだが、自分は積極的に肯定
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プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第3章(2023年製作の映画)

4.5

相変わらず良い出来の中編アニメ映画となっていて、シリーズの転換点らしい波乱の展開で締めともなっていたが、ここで何の予告も無しに終わるのは生殺しが過ぎるってところで待たされるのはちょっとキツい。

ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り(2023年製作の映画)

4.5

存外面白いという噂を耳にしていたので気になり鑑賞したら、なるほどモンティパイソン的なお間抜け要素を随所に味付けされたロードオブザリングといった様相を呈しながらもメインキャラ全員に格好良い見せ場のある小>>続きを読む

グリッドマン ユニバース(2023年製作の映画)

4.2

世界観設定や後半の説明台詞がTVシリーズ以上によくわからない感じではあったけれど、そういうのは二の次と割り切ってキャラ描写なり掛け合いなりを第一として楽しめる(自分のような)人間にとってはかなり良い劇>>続きを読む

ファントム・オブ・パラダイス(1974年製作の映画)

4.2

オペラ座の怪人をロックでアメリカンニューシネマ的にアレンジした強烈な作品。

元ネタを更に過激にした内容だったりロックナンバーの良さだったりも気に入った点ではあるものの、この時代のデ・パルマらしいヒッ
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デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム(2022年製作の映画)

4.0

芸術家としてのデヴィッド・ボウイをフィーチャーしたような芸術的映画。

デヴィッド・ボウイに関する映像や曲の引用を中心として作られていて、壮大な名曲の多いミュージシャンだけに音楽によりクライマックス的
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シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)

4.0

変身してからの台詞がめちゃくちゃ聞き取りにくかったりそもそも台詞自体に理解困難な箇所も多かったりノリがちょっと変な部分も多数だったりと問題点もかなり目立ちはしたが、それでも諸星大二郎成分を配合しつつエ>>続きを読む

仮面ライダー対ショッカー(1972年製作の映画)

3.6

井上敏樹の父親らしい雑ながらも大胆な脚本や、えも言えぬ魅力と格好良さのある初代ライダーらのアクションシーンとかには、昭和の特撮ならではの味が感じられてならんのよな。

My Best Friend's Wedding/My Best Friend's Sweating(原題)(2011年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

やっぱこれ、結婚式とかでめっちゃ泣いたときに「これで身体の水分全部流れたら死ぬよな」って考えたことから着想得たのかな?

長ぐつをはいたネコと9つの命(2022年製作の映画)

4.5

本当にそんな上映時間も長くないからってのもあるんだろうけど、画面の迫力が凄くて良い具合にキャラの魅力も迸っていたから最近でも特に体感時間が短く思えた作品だった。

役者(1948年製作の映画)

4.5

サッシャ・ギトリが自身の父親で名優と謳われたリュシアン・ギトリを演じて人生の数場面を映画にした作品。

楽屋でのいざこざ等をサッシャ・ギトリらしい演劇的質感で見事に描いており、純粋に面白いだけでなく父
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群盗、第七章(1996年製作の映画)

4.5

内容としてはゴッドファーザーやワンスアポンアタイムインアメリカとかに近い部分もあったのに、どれだけ悲壮だったり残酷だったりしても描写が淡々として日常性すら感じられるところにイオセリアーニらしさがあって>>続きを読む

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