くりふ

ダバング 大胆不敵のくりふのレビュー・感想・評価

ダバング 大胆不敵(2010年製作の映画)
4.0
【いまを生きる(踊って殴って)】

短かった都内での上映を逃してしまい、やっと千葉でみてきました。電車で行ったらプチ探検。広大な草地に囲まれたスゲエ立地。サウスだ(笑)。

でも遠出の甲斐あり!私の少ないインド映画経験からだと稀有の珍味。コテコテなのに品がいい。そしてダンスもアクションもフル盛り(笑)だけど、昇華ポイントはそこじゃない。…というのが新鮮でした。

まず人物そのものがオモシロイ。オモロイ人物が集まるからその家族がオモシロイ。

そして恋だの結婚だので幾つも家族がぶつかり繋がり広がって、あくまで人間的オモシロさがぐいと膨らむ。そこに各家族の在り方を通し、現代インド事情がひょい、と忍び込む。

けっこう深く、脚本的にはマジメですね。言葉にすると単純ですが、よくできてますよこの映画。

人物とその関係で十分面白いから、ダンスもアクションも時に邪魔とさえ思った。アイテムガールのセクスィショーなんてウホウホな筈が、不思議と早送りしたくなる。

一方、アクションは誇張し過ぎと思った。身体感覚から離れてしまってちょっと冷める。…やりたいこたわかるけどさ(笑)。

サルマーン・カーン演じるチュルブル・パンデー、そのアンモラルな訳は最後まで謎だが(笑)、絶妙でした。こんな風に善悪と賢愚と美醜が混ざってなおバランス良い人物って多分初めて。レシピ不明キャラ。

映画で男に魅力を感じることって殆どなくなりましたが、コイツはいいね!グラサン芸も流石(笑)。石原軍団もこの路線狙えば復活できると思うよ。

で、チュルブルがいいのは、妙に頂点狙ったりせず、堅実なんですよね。貯金したりとかね。…汚職で稼いでるんだけどさ(爆笑)。

全般、男ばっかり男がイイ作品。

ヒロインのソーナークシー・シンハーは、場面によって美人度違うのがオモロイけれど、主人公のトロフィーワイフっぽく収まっちゃうのが残念。本作でデビューなんだ。IFFJ2014『略奪者』での主演をみましたが、あまりに印象違い別人のようでした。本作ではちょっとお人形さんぽいけれど、この後、すっかり変わったようですね。

コテコテなのに品がいい、というトーンが新鮮だったのですが、高倉嘉男さんの評を読んだら、そう作られた事情が少しわかりました。

インドの映画館マルチプレックス化に始まる観客層の推移を踏まえ、要は、層の下を中心に上まで狙った結果なのですね。

南インド映画(サウス)の感覚も取り込み客層を広げたいこともわかるし、しかしラジニ映画ほど能天気にしないことも成程、と思いました。ラジニだったらヒーローがもっと説教臭くなるでしょうね。

…まあ、私がわかることなど微々たるものですが、本作は観客とガチで戦っているんだな、とより感じられて、よりインド映画が楽しみになりました。

…他に書くべき大切なこと、たくさんあると思うのですが、例によってまとまらないので、このへんで。

あ、DABANGGって「恐れ知らず」「誰にも屈しない」という意味だそうです。でも、かーなりヤバいとこまでイッちゃってましたねえ(笑)。特にいくら口には口を、とはいえ悪党へのアレは…

鼻がブォーッ!て煙突化しなかったのは、謎でしたが(爆笑)。

<2014.10.20記>
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