豚肉丸

ヴィクとフロ、熊に会うの豚肉丸のレビュー・感想・評価

ヴィクとフロ、熊に会う(2013年製作の映画)
4.3
刑務所から出所したおばあさん二人が、森の奥で老人を介護しながら静かな新生活を始めようとしていたが、犯した罪はそう簡単には消えず……というお話

「面白い!」と言っていいのかどうか悩むが、面白い映画ではある。ただ、面白いと言っていいのか悩むし見終わった後は自分の感情がよくわからなくなる。ただ、「とんでもないものを見てしまった…」というあの感覚は味わえる。

同監督の『ゴーストタウン・アンソロジー』を見ていても感じたけど、この監督の作品ってどこか乾いた空気感が全編を通して漂っている。前者の作品は舞台が雪国のゴーストタウンで、この映画は静かな森の奥。
二人は時々喧嘩しながらも仲良く過ごしていく。ただ、お互いの性的嗜好の違いなどから徐々にすれ違っていき……と、話自体は普通のレズビアン映画である。この監督の空気感も相まって、雰囲気はまさに上品なフランス映画。
だが、そのラブストーリーには「犯した罪」という永遠に切り離せない過去が存在し、それは徐々に物語を侵食していくのである……

殆どが静かでスローテンポで進む。それ故、終盤のある演出が非常に突飛で、印象深いものとなった。
二人を正面から映していたカメラが切り返して、異質な雰囲気を醸し出した、言わば映画に場違いな『車』が大きく画面の中心に映る。この一連のシークエンスは本当に凄い。

最初は「何だこれ……」と思ったけど、よくよく考えたらちゃんと最初から最後まで物語の筋は通っているし、物語の終わらせ方としても納得感はある。ただ、本当にとんでもないよこれは。唖然とした。
豚肉丸

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