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テロ、ライブのOASISのレビュー・感想・評価

テロ、ライブ(2013年製作の映画)
4.0
ラジオ番組の生放送中に突然かかってきた電話によって、多額の現金と大統領からの謝罪を要求する爆弾テロ犯との駆け引きに巻き込まれたアナウンサーの話。

ハ・ジョンウ主演のワン・シチュエーションスリラー。
「ミッドナイトFM」や「トーク・レディオ」などDJブース内だけで展開する映画は数あれど、そこに真犯人の正体や目的以上に重要な自国への強い批判・メッセージが込められ韓国映画らしさがミックスされた作品だった。

耳の小型爆弾、局長や警察による極度のプレッシャーに押し潰されそうになりながらも、犯人との通話の中で彼が歩んできた人生を知る。
作業員として橋の建設に携わっていたが、目の前で同僚が事故により亡くなり、その件に関しては謝罪も無かった。
2億円の要求も人質も、ただの金目的では無く政府役人達の逃げ場を無くす為の手段であり、謝罪の一言を聞きたいが為の苦肉の策。
全てはひとことで済む話を、放送に関わる人達の様々な思惑によってより悪い方向へと導かれていくという流れは完全にメディア批判だろう。

視聴率を獲得する事しか考えない局長達や時間稼ぎをしようとする警察側よりも犯人側への同情を煽る展開は、力技ながら長官が爆死した瞬間にはスッキリとした気分になった自分が居た。
あそこで大統領が出てきて「わだじは、韓国をがえだい!!」と号泣しながら謝罪していたなら速攻解決していたかもしれないが、体裁上そう簡単にメディアに出る訳にも行かなくて。

過去の収賄容疑を暴露し主人公を妨害する局長や、引き延ばしにより全く姿を現さない大統領など、あらゆる手で真実を報道しようとしない大人達に嫌気が差すのも無理は無く、自暴自棄になった彼が起こした行動には賞賛を送りたい気持ちになった。
あの行動によってこの映画はただのエンターテイメントから社会派映画に一気に押し上げられた。

犯人は橋やビルを吹き飛ばす程の爆薬を一体何処で調達したのかと疑問に思う部分もあるが、こじんまりした空間から解き放たれ規模が大きくなっていく見せ方も上手く、最初から最後までライブ感や緊迫感が溢れていて手に汗握る映画でした。
ラジオはテレビよりもパーソナリティとリスナーの距離が近く感じるがゆえに、あったとしてもおかしくない世界だった。

@テアトル梅田
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