sithmaro

宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟のsithmaroのレビュー・感想・評価

3.8
『宇宙戦艦ヤマト』が出渕裕の手によってリメイクされると聞いた時は期待よりも不安の方が大きかった。
結城信輝のキャラデザインを目にした時は「こんなのヤマトじゃない」と思った。
そしてそのリメイク版である『宇宙戦艦ヤマト2199』の第1話を観た時「これはヤマトだ。21世紀にヤマトが本当の意味で復活した」そう感じた。
全26話トータルで観ると賛否両論あるが、続編を作る気がないならこれはこれで良作…なーんて矢先に「劇場版新作公開決定!」で崩れ落ちた思い出が(笑)

あの本編の流れから、どうやって続編を作るんだよ!という心配もあったが、今作は本編では描かれなかったサイドストーリーという位置付け。
イスカンダルでコスモリバースシステムを受けとったヤマトが地球へ帰還する途上のエピソード。
結構思いきったことやる。
と言うのも、イスカンダルで改造されたヤマトは設定上波動砲を使えない。
ヤマトのあらゆる作品において、切り札であり続けたヤマトの象徴ともいうべき武装を封印しているわけだから、これは冒険と言わざるをえない。
さらに物語の主軸が2199本編の中でも異端中の異端とも言うべき第14話「魔女はささやく」を彷彿させるもので、これはもはや波動砲封印レベルの冒険じゃない。
客層は私と同年代、あるいは更に上のリアルタイムで本家『宇宙戦艦ヤマト』を観ていたような人たちが結構多かったけど、その方々の目にはどう写ったのでしょう?
私はオリジナルも2199も両方好きだから、中盤のダラダラ感はどうかと思ったけど大いに楽しめた。

で、この映画で触れておかなければならないのはバーガー。
顔見せ程度のファンサービスの斎藤始やサーベラーとは違い、2199本編ではどちらかと言うと憎まれ役っぽかったバーガーが今回は准主役級の扱いであったことに驚かされた。
バーガーは本編では「血気盛んな切り込み隊長」というイメージがある一方で、ガトランティスを軽んじて見たり、ザルツ人に対する偏見を隠そうともしないというやや軽率とも思えるー面を見せていた。
ガトランティスは他のガミラス人も「蛮族」呼ばわりしていたし、ザルツ人も二等ガミラス臣民として差別対象であったことを考えると、一般的なガミラス人の反応なのだろう。
そのバーガーが古代達をザルツ人と誤認しても容易に受け入れ、同じ時間を共有することで友情を育み、さらに仇敵ヤマトのクルーであると知った後も共通の敵ガトランティス相手に共闘したり…
本編における彼の欠点を上手く生かしてストーリーに取り入れた上で成長を描くというのは心地良い。
何よりもヤマトの横をバーガーのミランガルが併走するシーンは興奮の極み。
かつての敵同士が恩讐を越えて共闘するというのはベタな演出ではあるが、最高の燃えシチュエーションではなかろうか。
この時のバーガーの艦、ミランガルがゲルバデス級というのも実は高いポイント。
ゲルバデス級は旧作の戦闘空母のリデザインされたものだが、かつてヤマトがデスラーのガミラス艦隊と初共闘した時の旗艦が戦闘空母の発展型であるデスラー戦闘空母であったことを考えると感慨深い。
そういうのも含めてファンサービスなんだろう。

長々と書いてしまったが、2199を観ていない人には絶対お勧めしない。
だが、私は好きだ。
sithmaro

sithmaro