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百円の恋のmaiのレビュー・感想・評価

百円の恋(2014年製作の映画)
3.6
ちょっと冗長な部分もあったけれど、とにかく安藤サクラが大好きになる…そんな安藤サクラの演技力の魅力がたくさん詰まった映画でした。
内容もさることながら、これは安藤サクラのための映画だなと思いました。

働くやる気のない一子は姉と喧嘩をしたことで家を出ますが、働き口もなく仕方なしに百円コンビニでアルバイトを始めます。そしてボクサーの狩野とズルズルと付き合い始めますが、出ていかれたのをキッカケにボクシングに目覚めます。
その後は「勝ちたい」という思いの元、練習に励みますが、結局テストは受かったものの試合は惨敗。しかし、確実に一子は変化していました。

この映画の最大の魅力はやっぱり安藤サクラだと思います。気怠げなやる気皆無の役もこなして、悪態を吐く姿も様になっているし、かと思えば狩野に本当に恋し始めてる純粋さも可愛らしかったし、その狩野の前では本音をさらけ出して醜い姿でもさらけ出しちゃう正直さもあって…人間臭くて、その人間臭さが凄く魅力的に映りました。
そして、最後の最後でクリープハイプの「百八円の恋」が流れ出します。「もうすぐこの映画も終わる」「これから始まる毎日は 映画になんてならなくても普通の毎日でいいから」って冒頭の歌詞がめちゃくちゃ一子に刺さりますよね。
さらに、この曲がまたエンディングっぽくなくて明るいし、「いたいいたいいたいいたい」って歌詞も凄く印象的なんです。ここから一子の人生が再スタートするんだなっていう明るい期待感で映画が締められるんです。この手の映画では珍しく、まだ全然うまくいってはいない始まったばかりの主人公の新しい生活への期待という余韻に浸れました。

日常の地続き感を大切にしている映画だから、いろんなシーンで冗長的だなぁと思うこともあったけれど、そういうのも込みで「普通にいそうな女性」のもつ強さだったり可能性だったりを描いて、観てる側も感情移入しやすい・共感しやすいものになってたと思います。まさに平凡(とまでは言えないかもだけれど)な生活の一部を切り取った成長物語になっていました。

新井浩文の何考えてるかわかんないけど、心根は良い人なんだろうなっていう謎の安心感も良いんですよね。
彼の不祥事があって、この映画が多くの人の目に触れる機会は薄れてしまったけれど、良い映画なのは間違いないです。
今考えても、安藤サクラと新井浩文のカップルって豪華ですよね…。
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