ヘソの曲り角

突破口!のヘソの曲り角のレビュー・感想・評価

突破口!(1973年製作の映画)
5.0
なんて気品に満ちた映画なんだろう。同時期の『スティング』と似た香りすらする優雅で遊び心をがあふれる軽やかな超大傑作。ドン・シーゲル✕ウォルター・マッソーの化学反応がとんでもない相乗効果を生み出している。主人公があまりに最強すぎるのだがウォルター・マッソーにしかなし得ない説得力によってすべてが成立している。「最初から最後までクライマックス」とはまさにこのこと。銀行強盗→逃走劇→異変に気づく…という序盤のある種鉄板でもある怒涛の展開ののち、主人公サイドと追っ手サイド、さらにおまけで公権力サイドも描くことで中盤ダレるのを最小限に抑えている。それどころか追っ手の役者がこれまた良すぎて面白さがプラスされる。終盤には小型飛行機vs乗用車という珍しいチェイスが披露されるほかにも最後の最後まで目が離せない洒落た仕掛けの連続。こんなにワクワクする活劇は久しぶりだ。

ドン・シーゲル御大の演出はとにかくハズレがないから安心して最後まで見られる。ドン・シーゲル作品はアドリブなんだかわからないしぐさが生っぽくて面白い。亡くなった警官の顔を帽子で隠す時に帽子についた土を取ったり、ウォルター・マッソーが妻との別れに二回目のキスをしたり。ああ、そういえば妻への愛が溢れているのも良かった。あと相棒にちゃんと分け前あげててそこが最高に洒落てた。音楽もラロ・シフリン師匠。間違いがない。