ヨダセアSeaYoda

はじまりのうたのヨダセアSeaYodaのレビュー・感想・評価

はじまりのうた(2013年製作の映画)
4.7
“音楽の魔法だ。平凡な風景が意味のあるものに変わる。年を取るほど、この真珠がなかなか見られなくなる”

【REVIEW】
 さまざま刺激を感じなくなり、人間関係もうまく行かず、でも人生経験は積んできたからこだわりやプライドも捨てきれず…そうなると日々は単調になってくるが、そんな繰り返しの毎日には満足できない。
 それがきっと年齢・経験を重ねるということで、そこから新たな喜びを見つけるというのは1つの試練になってくるのだと思う。

 まだ30手前の自分ですら、新たな挑戦への腰は「よし!」と気合を入れなければ持ち上がらない。「いつも通りの日々」ではつまらないのに、いつもをはみ出すのには体力がいる。
 今から”ハマるアーティスト”にはなかなか出会えない。小中学生の頃、初めて聴いたスタイルの音楽は、J-POPだろうとK-POPだろうと洋楽だろうとバンド、アイドルだろうとなんでも新鮮で最高だと感じたけど、良く言えば”耳が肥えて”しまって(年齢重ねながら音楽を聴きまくっていればそれが普通で、自慢にもならないのに)、刺激がない。

 それが、今作のマーク・ラファロ演じるダンくらいともなれば、何に対しても”不感症”気味になってしまっているのは当然。年齢と経験を重ねたからこそ出る辛さや苦労は、キーラ・ナイトレイ演じるグレタや、まして娘の年齢でわかるはずがない。
 でも、じゃあどうすればいいか。わかってもらえないからと言って諦めたり怒ったり不貞腐れていても何にもならない。だって相手にはわかり得ないんだから。そこをどう対処し、新たなフェーズに進むかというのが、ダン、そしてすべての大人が乗り越えていかなければならない試練だ。

 そんなダンを救う一つの要素は、もちろんグレタの歌。不感症の耳すら震わせる才能は、一つの解決策だ。でもそれだけでは”大人の価値観”は変わらない。最後に直接自分の人生を変えるのは、ダン自身の切り替え。人生への向き合い方の変化だ。

 まだ若く、夢と闘志に溢れるアーティストは、そのまま突き進めばいい。彼女には応援が必要だ。
 さらにまだ若く、トガって、ただ愛と楽しさを欲しがる学生には、まずは愛と楽しさを与えればいい。彼女には親から褒められたり認められる経験が何より必要だ。

 今作は、先を生きる大人、人より経験を積んだり、深い考えをできるようになった人が、行き詰まった状態から一歩踏み出すヒントを与えてくれる。こんなこと感じていたってまだ自分は30手前。もっと先の未来、また今作を観たら、そこにまた学びがあるはず。それが今からとても楽しみ。

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観た回数:2回
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