TOUGH

ザ・レイド GOKUDOのTOUGHのレビュー・感想・評価

ザ・レイド GOKUDO(2013年製作の映画)
4.8
上げ直し。

純度100パーセントの「暴力映画」。

「アクション」のみに振り切った前作から一変し、本作は純粋に「暴力」にフォーカスした内容になっていたのが個人的に好印象。

そもそも「アクション」と「暴力」の違いは何かについて。「アクション」とは役者の動きを「どれだけスタイリッシュに見栄えの良いものとして魅せるか」に着目されているものであり、それに対して「暴力」は役者の動きを「如何に野蛮で厭に魅せるか」に着目されているものであり、同じ「動き」を通しての表現であっても棲み分けされいるものと個人的に解釈している。

そこで本作は前作より更にその一段階先の「暴力」に視点が置かれており、「妻子を守る為」、「街から汚職警官を一掃する為」という大義を掲げていた主人公が残忍な「暴力の世界」に次第に感化されていき、堕ちていく様を前作とは別方向でとても厭らしく映し取っている。

特に好きなのが、主人公が汚職警官だったとはいえ同じ正義の側に立つ人間を、苦悶に満ちた表情をしながら高熱の鉄板に顔を押し付けるという、思わず目を覆いたくなるような卑劣な制裁を与えていたシーンで、もはや彼が後戻りが効かない所まで堕ち切ってしまった事が説明臭いセリフ抜きで自然に表現されていて、とても美しかった。

クライマックスでの最強のアサシン、「キラーマスター」と主人公のラストバトルにしても、最初はシラットを通した技のぶつけ合いをしていた2人が、次第に純白のキッチンを流血で赤く染め上げる程に野蛮で苛烈な命の取り合いにまでヒートアップさせていく場面も本作一番の目玉と言って過言じゃない程で、とにかくコレでもかと「暴力」を魅せることに余念が無い。

確かに前作の「戦闘」以外のあらゆる要素を削ぎ落とした美しい構成に比べると、本作はドラマパートが長く、やや冗長に感じられてしまうかもしれないが、「厭な暴力シーン」を引き立たせる為の話作りは正直嫌いになれないし、むしろ「厭な暴力」を魅せる為の画面作りに関しては前作を超えていたとすら思える。このように同じシリーズであってもそれぞれ別の方向で傑作を作り上げられている点に映像作家ギャレス・エヴァンスの技量の高さが窺える。改めて大傑作です。
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