尿道流れ者

滝を見にいくの尿道流れ者のレビュー・感想・評価

滝を見にいく(2014年製作の映画)
4.0
七人のババアが滝を見に行くツアーで遭難するだけの話。電波も届かず、喜びとしての都会や文明からの逃避も反対に恐ろしい事態の幕開けとなってしまう。ババアと森の調和はさしづめ異空間と言いたくなるほどの別世界っぷりで、そこがユートピアかディストピアかの議論の余地なく、図々しいババアと気弱なババア達の危険なケミカル臭のする化学反応が始まる。

森とババア、その響きからは腐乱死体をイメージしてしまうが、この映画では時に幻想的で懐かしく、愛らしいものに見えてしまう。ババアというか女性特有の適応能力の高さが実に面白い掛け合いを生む。ジジイだらけではこうもいかないだろう。ババアが遭難するなんてニュースを見れば、なにやってんだと警察の手をわずらわして無駄に税金を遣わしてんじゃねぇよと憤る気持ちもあるが、この映画ではババアを応援してしまう気持ちになってしまう。まさかババアに泣かされるとは思わなかった。まさかゴダールのアワーミュージックを連想させるような美しさを感じるとは思わなかったよ。自然と人の調和という意味で。

少しづつ現れになるババアの喪失感など、老後という死の匂いも感じさせながらもそこにある瞬間瞬間の生命の輝きに感動を覚えていき、なにか崇高な意味合いをも感じてしまう始末。ババア同士が付けあうあだ名なんて興味は無いはずなのに、言葉を追ってしまう。

ババアに笑い、ババアに泣き、ババアに勇気付けられる。そんな僕の姿をお母さんが見たら泣くでしょうか?でも、映画館を出た後、少し大股で歩いてしまったのは紛れもない事実です。ありがとうございました。