すずきひろし

岸辺の旅のすずきひろしのレビュー・感想・評価

岸辺の旅(2015年製作の映画)
5.0
映画のひとコマひとコマの間が断絶していて、それが繋がった一つの映像のように見えてしまうのが脳の錯覚、残像であるように、この作品の幽霊も、連続した生の唐突な断絶に耐えられない者による残像、なのかもしれない。しかし、劇中で浅野忠信が言っているように、そのような残像、実体の無いものにも意味があると、黒沢清は映画原理から、宇宙の時間軸からは映画のコマとコマの明滅の如く儚い生を、ベタなメロドラマとして肯定してみせる。

黒沢清は、映画が自然な物語として成立する為の騙しのテクニックである文法を敢えて異化させる事で、映画の原理的な身も蓋も無さを露出させる、そうした違和感をホラーというジャンルで表現してきた作家なのだけれど、劇中で深津絵里が言っているように、死者(ホラー)と、生者(メロドラマ)というのは、実は大した違いは無いのかもしれない。