2009年のブリュノ・ポダリデス監督作品。ヴェルサイユ出身の彼は映画への情熱からパリ第13大学で視聴覚の修士課程を修了し、兵役中にはフランス軍の映像・写真部門に入り、映像制作の経験を積む。兵役後は企業向けの映像制作に携わるようになる。特にエールフランスの企業映像ではブリュノの弟で俳優のドゥニ・ポダリデスが出演している。彼ら兄弟の創作活動は本格的に映画を撮り始めるから始まっており、現在に至るまで継続している。 ブリュノ・ポダリデスが注目を浴びるようになったのは1992年の中編作品『Versailles Rive-Gauche』からである。この中編ではドゥニ・ポダリデス演じるアルノーという男がヴェルサイユの小さなアパートで新しい恋人がやってくるのを待っている。準備の途中でトイレに行くが、途中でドアベルが鳴り、トイレを流さず彼女を迎えることで巻き起こるコメディでほとんどのシーンが空間としては彼の家のみで展開される。後のポダリデス作品に頻出する『タンタンの冒険』のモチーフが今作では部屋に飾られたポスターで姿を見せたり、ヌーヴェルヴァーグのパロディ的作品なのでフランソワ・トリュフォー監督『大人は判ってくれない(1959)』やジャン・ルノワール監督『黄金の馬車(1953)』といった作品の写真を飾ってオマージュを捧げたりしている。「ヴェルサイユ左岸」を意味するこの作品は1998年の長編デビュー作『Dieu seul me voit (Versailles-Chantiers)』と本作『公共のベンチ(ヴェルサイユ右岸)』でヴェルサイユ3部作を形成することになる。