浪川リオン

フルスロットルの浪川リオンのネタバレレビュー・内容・結末

フルスロットル(2013年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

個人的にアクション映画の傑作だと思っているリュック・ベッソン脚本の『アルティメット(バンリュー13区街)』のハリウッドリメイク。

90分映画の割には余分と思うシーンが多くリメイク元と比べるとスットロく感じて少しイライラしてしまった。

例えば『アルティメット』だとダミアンが登場する場面などはいきなりギャングとして潜入捜査している場面から始まり、ダミアンの白兵戦の強さを示したところで一瞬のカット割りですぐさま爆弾の任務を依頼する場面に切り替わる。このスピード感が素晴らしい。

これが『フルスロットル』だと怪我をしたダミアンが自宅でターゲッティングしている犯罪者の写真が貼られたボードを眺めながら彼女に『帰り遅かったのね。約束忘れてたの?』等と声をかけられながら潜入捜査の回想に入るので回りくどいしスピード感が随分損なわれていると感じた。
あとこの恋人もこの一瞬しか出番が無いので本当に無駄なシーン。何の為に出したのか?

リメイク版で追加、変更された設定… リノ(オリジナルだとレイト)の妹→恋人の置き換えやらダミアンの父の仇がギャングのボスだとか、特に物語に深みを与えているとは思えなかったしスパイスとしては失敗してると思う。リノの彼女と衣装がやたらエロい女ギャング、レイザーとの絡みなんか丸々削除してもいいし、ダミアンの祖父の禁煙のくだりなんかも… いるかなこのシーン。

一番納得いかないのはギャングのボスが死なないどころか政治家に転向するラストシーン。
お前これまで麻薬で商売してきたのにいくらなんでもそれはないだろ。『生き延びる為に必死だった』というセリフだけでは到底納得できない。
もしボスを政治家に転向させたいなら麻薬商売はさせず、一本芯の通った人物として描写させる必要があるはずだけどそれは90分の枠組みでやる事じゃない。

オリジナルのタハの死に方とか最高なんだけどな…
(タハが傭兵達から撃たれる時、K2が目を伏せて顔を背けるが、そのさり気ない演技で彼は彼なりにボスから世話になって尊敬していた部分ももしかしたらあったのかもなと思わせてくれるのがまた良い。説明くさいセリフではなく、演技でサラッとやっているのが良い)

イエティを二人がかりで縛るのも… なんか違う… ダミアンは白兵戦、格闘のエキスパート。リノ(レイト)は軽業師という分担がなされているからそれぞれのアクションが際立っていたと思うのだけどな。

中性子爆弾を飛ばそうとしてみたり狙撃でそれを阻止したりとかのシーンも特にいらないかなと思ったし、オリジナル版との差異を付けたくてあれこれ加えたアレンジが雑味のようになってしまっていると思った映画でした。

…いや、カーチェイスの最中ダミアンが凄まじい勢いでドリフトターンし(車の運転に詳しくないので何と呼ぶべきか分からないが)、起こした土埃で敵を文字通りケムに巻くシーンはとても良かった。

これは『ワイルド・スピード』シリーズを経ているポール・ウォーカーがやれたからこそ出せた味で、もう彼の新作が見られない事は悲しくもあったがアクション映画俳優としての彼の雄姿をしかと映画史に刻みつけた名シーンだと思う。

パンチラ回数:7回くらい
(有り難みがなくなるほどあるので途中から数え方も雑になりました)