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マイ・インターンのtakのレビュー・感想・評価

マイ・インターン(2015年製作の映画)
3.9
映画に夢中になり始めた頃から現在まで、誰の出演作品を映画館で(ここ大事)最も観ているのか?と気になったことがある。数えてみたら、嫌いなはずのトム・クルーズ、永遠の憧れハリソン・フォードを抑えて、最も金を払って映画館でお目にかかっているのはロバート・デ・ニーロだった。カメオ出演を数えたのもあるけど、高校時代に「レイジング・ブル」と「ディア・ハンター」の二本立てを観るくらいに好きだったし、役作りの凄さに尊敬の念を抱いていた。「タクシードライバー」に代表されるハードなデ・ニーロを見続けたせいなのか、コメディ映画で柔和な役柄を演じ始めたある時期から主演作を積極的に観なくなった。

そんな僕だから、この「マイ・インターン」を観ようとはなかなか思えなかった。だって、退職後にアパレル会社で再雇用されるおっさん役なんて、デ・ニーロでなくてもできるだろう。そう思っていたのだ。

ところがである。「マイ・インターン」を観て自分の先入観は誤りであることを悟った。スタンダードを知った上で、自分に合ったスタイル、流儀、美学を身に付け、しかも若い世代にも慕われる"ちゃんとした大人"ベンを演ずるデ・ニーロ。やたらカッコいいのだ。自分が若い頃にこの映画を観ていたら、"感じの良い大人"として好印象を持って終わっていただろう。自分が社会人経験を積んで思い知らされるのは、人間関係を維持することの難しさ、仕事は年齢なんて考慮してくれないこと、経験値とキャリアがなんだかんだで役に立つこと。そんな身の程を知った今の自分だから、再雇用先で信頼と親しみを勝ち得ているベンのすごさが理解できる。そして若くしてアパレル会社を率いて気持ちも仕事もパンパンになってるヒロインの、精神的な支えとなって彼女の生き方に影響を与えていく。素敵なことだ。

どんな世代が観てもそれぞれの感じ方ができる映画だろう。エンドロールを迎えた観客の背中をポンと叩いて勇気づけてくれる、そんな優しさがある。

「ハンカチは女性が涙した時に貸す為に持つものだ」って台詞が粋だよね。ほんとは身だしなみの大切さなんだけど、こういう気持ちで持ち歩くことは、人への気遣いや紳士的とはどういうはことか考えるキッカケになるのではないだろか。

ある暑い日に、ハンカチを忘れた女性がお店の紙ナプキンで汗を拭っていて、おでこに紙が張り付く無残な状態になりそうだった。僕は「よかったら」ってまだその日使ってなかったハンカチを差し出した。「マイ・インターン」を観る前にそんな行動がとれた自分を褒めてやりたい(笑)
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