すずり

マイ・インターンのすずりのネタバレレビュー・内容・結末

マイ・インターン(2015年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

70歳で未だ活力の尽きない老人ベン(ロバート・デ・ニーロ)は、新たな転機としてとあるアパレル企業のシニア・インターンへ申し込む。そこでは、常に忙しく仕事に追われる新進気鋭の女性経営者ジュールス(アン・ハサウェイ)の部下として働くことになる。
この映画は、そんな本来はあまり交わらない世代の2人に焦点を当てた"友情"の映画である。

・・・

朝目覚めた時に相応しいような爽やかな音楽が綺麗な映像を飾り、観ていてとても心地の良い映画だった。
登場人物もみな善良な人々で、それぞれが真摯に己の生活に取り組んでいるので、苛立つシーンが殆どないなんとも優しい映画だった(まあ浮気は多少はね...)。
また、その展開に大きな動きこそ無いものの、その分キャラクター達の心情の機微の描写が丁寧で、彼らの仕事での悩みや日常の中の諍いによる心の動きに寄り添って観ることができた。

そして、主人公であるベンの立ち振る舞いや仕事ぶりはとても多くのことを私達に教えてくれる。
活力を持って何かを探し続けることの大切さ。
人の話に真摯に耳を傾けることの重要性。
ハンカチは人に貸すために持っておくこと。
老いというものが決して否定的ではないということ。
私個人としては、老いていくことに語り得ない恐怖のような物を感じることもあるが、本作のベンのように時間の歩みと共に深みのある人間になっていきたいものである。

そして、現代的な働く女性像としてのジュールスという存在も、この映画を何倍にも良い作品にしている。彼女のように夢を追い駆ける女性達の抱える悩みの部分を掘り下げつつも彼女らにエールを送り、彼女らを支える周囲の人々にもその姿勢を応援して欲しいと投げ掛けている本作は、とても現代的なテーマであると感じた。

世代間のギャップや性差というものを敢えて"肯定"した上で、その関わり合いを美しく描いている本作。
一見の価値しかない。
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