JIZE

ライフ・アフター・ベスのJIZEのレビュー・感想・評価

ライフ・アフター・ベス(2014年製作の映画)
3.5
ディン・デハーン主演のゾンビ派最新作!!儚き人生讃歌を煽る異色な皮肉劇!!鑑賞後,暖かく心地良い気分に浸れる筈のスムース・ジャズが至極嫌いに..主演デハーンの優柔不断なコミカル演技が楽しめるか否かで評価が酷く分離する作品なのかと思いました。全体像はナチュラルでドライ調でブラックユーモアを織り交ぜ飾られる軽調なニュアンス。要はトレンディ調なコメディ作品です。ゾンビ化した彼女は初々しさを捨て停滞する女(妻)の習性を発揮するようになり食や性に対する動物的な欲望が抑制出来ず己の主張のみを繰り返す。尚且つ記憶が曖昧で他の女性に優しく介抱すれば敵意剥き出し&大暴走...外見(体型)の劣化に対しても直そうとせず開き直り...と実際のゾンビより恐怖的なモノをよぎらせた。また視点の切り抜き方からもデハーンの"普通"を促す新境地で新たな王道作に思えました。

お話の縦軸はザックの彼女であるベスが,ある日ハイキング中に毒蛇に噛まれ死亡した筈なのに突如墓地から這い出てゾンビ化しザックに対し災難を煽る意味深なブラックコメディ。ベスの習性をザック目線で本質を見抜き非常にシニカルかつデフォルメされた描き方を採用。要は,男側の皮肉を唄う冷酷な映画。異常現象に対する周囲の冷め切る反応がナチュラルなザックとの対比をなしブラック感の増幅に幅を利かせたように思えた。演出的には正確な視点をグラグラさせられ秀逸です。

概要。監督・脚本を務めたのは今作が監督デビュー作となるジェフ・バナナ。主演は『クロニクル』や『アメイジング・スパイダーマン2』など多彩な演技幅で有名な若手俳優ディン・デハーン。ゾンビのベス役には米国人気コメディエンヌのオーブリー・プラザ。エリカ役には『ビッチ・パーフェクト』出演のアナ・ケンドリック。公開規模も新宿シネマカリテ1拠点のみと(後に関西公開も決まったが)特集企画「カリコレ2015」期間限定の上映だった為,関東圏以外に住む私としてはやっっっっと鑑賞出来たかという気持ちです。

では今作結論を述べれば,表面的にはゾンビ化した彼女にベスが散々振り回され挙げ句の果てに"あの行動"に移すと開幕終幕のハイキング繋がりで円環構造を構成的には見事に貫いてるんだけど,真のメッセージ的な裏部分は生涯に渡る"人生の儚さ(真実)"をゾンビ騒動の形式で皮肉混じりに魅せた点に集約的な醍醐味を感じ取れた。後悔の念や亡き妄念の騒々対比も暴れ狂うゾンビ(動)や常識から逸脱する家族(動)を置きザック(静)との対比が促す。デハーン演じるザックの謙虚で真面目な役回りが周囲とのズレを浮上させ人物配置は均衡の取れた構成に思えました。

他,物語の些細な偏差でも①冒頭でハイキング中にベスがスマホ片手に行動した事が大惨事を招く最重要な伏線なら(それを)描写としてちゃんと見せた方が核心部としても...や②ザックがベスの葬儀用に黒のナプキンを選ぶ描写も不謹慎さ余りパーティーショップに導く店員もブラック感が等③ザックの兄貴が警備員と思えない程狂う資質設定も常識逸脱が過ぎてたかと...④ベスの蘇生に対し親族が❶奇跡❷復活❸聖書通り,の3単語で貫き通す場面も笑みがこぼれます。⑤ダブダブの水着や夏ものマフラーを装着するザックの悲哀的な悲愴感も⑥ベスとザックが興奮のあまり一般的な公園の砂場で性行為する描写やキスを何度となく繰り返す描写はえ⁉︎だってゾンビな筈では?唾液感染や性行為なんてもってのほかじゃ....感は違和感としてクライマックス迄継続。ベス周りのゾンビ体質における拭えない違和感は下記で具体的に述べてます。⑦海辺でザックがベスに対しギター片手にサプライズパーティーを開くロマンス描写ももう少し膨らませようがあった気する。大暴走の果てに放火ってもうなんでもアリか!!と勿体無く⑧アナ・ケンドリック演じる新恋人エリカの存在も強いて言えばベスと何かの関連性があれば良かった。演技や存在はひときわ放ってる為,キャスト選考や演技幅は『ビッチ・パーフェクト』未鑑賞ですが本当に出過ぎない感じが見事。今後も注目の俳優株として期待。⑨終盤でベス以外の死人(ゾンビ)が一挙に甦る演出もベスの特別感が薄れ正直余計だったんじゃ....感は否めず。要は後半部の詰め込み過ぎた性急かつ矛盾な畳み掛けが丁寧な前半部の展開と比べ見劣りし残念に思えた。

今作の詰めが甘い否箇所は,ベスのゾンビ設定に至る潤滑的な規則性が説明なしで完璧に削がれた点。一歩間違えばもうなんでもアリかよ⁉︎な領域にも垣間見えない。要は,感染経路や変異過程の論理的かつ具体的な補い説明が劇中どほぼ絡まず全て観客を置いてけぼりにする後出しジャンケンが厳しい領域に突入してたんじゃないかと思う。上述したが"キス"や"性行為"したら普通即感染するでしょ!な下りでもなんら制約上の問題が生じず,日焼けすれば皮膚が水膨れ症状を起こし徐々にゾンビ化するという徹底的なシュール演出。ブラックコメディな作風を全面に押し出した分,突っ込むべき箇所じゃないのかもしれないが些細な粗が気になる人は正直かなり頂けない駄目設定に思えました。なんなら予定調和にもクライマックスへの不可逆演出⁉︎とさえ思え変異過程や感染経路に対し制約を置かない演出は非常に残念です。

従い,ディン・デハーン好きな私としては賛否色々と論いましたがシニカルなテイストが上手く効き好み!!です。スムース・ジャズも今日から就寝前に毎日聴く予定。ラスト10分のおざなり感も本幕締め方としては微妙でした。レヴィン家の屋敷に出向き単純にアレして終わり⁉︎....私自身のクライマックスは2度目のハイキングにベスと出掛ける場面です。悪役を醸し出すベス父親モーリーも人生の儚さを描く作品なのに顛末を端折り過ぎだろ...という頂けない印象。ゾンビ設定の基盤が酷い為,彼女がゾンビ化⁉︎という前知識を入れず無の状態で鑑賞すればより楽しめた作品に思えます。皮肉ギャグ最高!アナ・ケンドリック最高!ラストでアレしギャグ領域に埋没する外連味も最高!勿論デハーンLOVEな固定ファンは次回作でジェームズ・ディーン役を演じる伝記映画『Life(2015年)』の公開前に迷わずも早めのご鑑賞を是非,お勧めです!!!
JIZE

JIZE