28年前に起こった一家惨殺事件の唯一の生存者となった主人公が、ふとした契機で事件の真相に迫る物語。
『ゴーン・ガール』でも知られるギリアン・フリンの長編小説の映画化。同作の日本語訳のタイトルは『冥闇』とのことですが、本作を見終えると非常にしっくりと来る言葉だと思います。
作品を振り返ると、昼の場面であったとしても、狭い室内や影が入ることで、どこかに「仄暗さ」を感じさせます。それは事件に関連する人物たちが、四半世紀以上も心の奥底に抱える闇の存在と深さを意識させるためのモノだったと思います。
個人的に印象に残ったのは、シャーリーズ・セロン演じる主人公・リビーの自宅の描写です。寄付やゴーストライターの自叙伝の収入で食いつないできた彼女の古びた自宅は、いたるところに物が散乱し、本来の寝室ではない(と思われる)狭い物置で寝起きをしています。
こうした描写は、彼女の無計画で退廃的な生活を伝えると同時に生活に対する閉塞感や孤独を表現していると思います。そうした何かの「行き詰まり」が、彼女を突き動かしたのではないかと感じさせました。
また、リビーが抱える心の闇をシャーリーズ・セロンが背中で語っていたのが大変素晴らしかったです。自身が製作に深く関わってる点もそうですが、パンフレットによると彼女自身も似たような経験をされたということなので、役作りにおいても一段と踏み込まれてきた印象を受けました。
一方、シャーリーズ・セロンとは『マッドマックス』に続いての共演となるニコラス・ホルト、これまたファンも多いクロエ=グレース・モレッツの出番は少しあっさりしていたのは勿体無くも感じましたが、クロエの「乱れた私生活」少女をまた説得力抜群に演じていたのは流石(今度は普通の美少女役で見たい汗)。
心の中に潜む闇と見出した希望の光を描くという意味では、目に見えないものの可視化した作品だったと思います。この後に出版された『ゴーン・ガール』に比べると、直球のサスペンスでありますが映像的には本作の方が相性は良かったかもしれないですね。