えいがドゥロヴァウ

レヴェナント:蘇えりし者のえいがドゥロヴァウのレビュー・感想・評価

レヴェナント:蘇えりし者(2015年製作の映画)
4.4
※むっちゃ長くなりました

IMAXにて鑑賞

おお…
イニャリトゥ監督作品はこれまでに『バベル』『ビューティフル』『バードマン』と観ていますが
好みでないのかあまりハマらなかったのです
(だからそれ以前の作品は手をつけておらんのです)
それなのに毎度劇場公開時に観ていまして
何故かと問われれば
「観ねばならん気がするから」としか言いようがござんせんのです
しかしこの作品はあらゆるピースがカチッとハマり
様々な要素が相乗効果をもたらす映画的な歓びを感じられました

予告編でもグラス(ディカプリオ)の憎しみが溢れていたので
ディカプリオとトム・ハーディの2人で
韓国映画『悪魔を見た』のような泥沼復讐劇になるのかなと勝手に予想していましたが
泥沼ではありませんでした
至極シンプルな大筋を
アメリカの開拓者
先住民の2つの民族
フランス人
という4つの勢力を交差させながら描いております
そして極寒の大自然のなかで瀕死の重傷を負い、尚且つ息子を殺されて仲間に取り残された場合に役立つ極上サバイバル術が満載です

■映像
前作『バードマン』に引き続き撮影監督がエマニュエル・ルベツキ
『ゼロ・グラビティ』『バードマン』と継続的に採用されている長回し風撮影&編集術は更なる冴えを見せているのですが
以前と異なるのは冒頭からはこの手法を用いていないこと
それが功を奏し
熊にグラスが嬲(なぶ)られるシーンのリアルタイム性がもたらす緊迫感は物凄いものがありました
この人の撮影はカメラの位置がとても面白いですね
役者たちの輪の中に入ったり抜けたりと縦横無尽
まるでドローンを使っているようなステディーな浮遊感があります

ですが、撮影に関して特に印象的だったのはそこではなくて
カメラのレンズに土や水の飛沫がかかったり
太陽光のハレーションが映り込んだり
ディカプリオの吐く息でレンズが曇ったりすることでした
要は通常はご法度とされることを意図的にやっているのですが
撮影手の主体が朧げな浮遊感のあるカメラワークに対して
時折そうやってレンズ(=カメラ)の存在を強く意識させる演出が加わるというのは
何だかとても不思議な感覚に陥ります
いずれも臨場感の演出として効果は抜群です
そしてレンズにかかっちゃうシリーズの最後は…
ああ、なるほど…と
これは観てのお楽しみで!

【余談】
そういえば、『ビューティフル』にもハビエル・バルデムの背中をずっと追った長回しがありましたね
「本当に長回しワンカット」より「長回し風」のほうが良い気がしています
ギャスパー・ノエの『エンター・ザ・ボイド』もそうですが
実際にワンカットでは不可能な映像を
リアルタイム性を維持しつつも間延びを防ぎながら表現できるからです
全編ワンカット映画としては
アレクサンドル・ソクーロフの『エルミタージュ幻想』(99分カットなし)や
もうすぐ公開される『ヴィクトリア』(140分カットなし)などがありますが
映画的にどうのということより何かのチャレンジ(ドミノ倒し選手権的な)を見ているような気分になってしまうのです
『ヴィクトリア』は興味本位でおそらく観ます
長回し名人のタル・ベーラは、好きです(何のこっちゃ)

■音楽
坂本龍一とイニャリトゥ監督のご縁は「美貌の青空」を提供した『バベル』(あれはもうズルいくらいに素晴らしい余韻をもたらしましたね)以来かと思いますが
本作では坂本龍一は映画音楽を担当
決してエンニオ・モリコーネやジョン・ウィリアムズのような
曲を聴けば作品が思い浮かぶ印象的な音楽ではなく
前に出て主張はしないけどすんごく効果的という職人的な仕事ぶりです
作品のダークなテーマ性も相まってかデヴィッド・フィンチャー×トレント・レズナー&アッティカス・ロスと近い感じがしました
だがしかし、紛れもない教授の音
特徴的な和音だとかストリングスだとか
そして緊迫したシーンで流れるパーカッションの鼓動は『バードマン』のスネアドラムのビートを想起させます
エンドロールの音楽はもう、教授万歳!!
最高です

レビューが書きたかったのか
知識をひけらかしたかったのか
よく分からんくなってきましたので
終わります