Nyenent

アンダー・ザ・スキン 種の捕食のNyenentのレビュー・感想・評価

4.2
 冒頭の映像、そしてリゲッティを意識したような音楽からも、「2001年宇宙の旅」を思い浮かべてしまう。そういう意味ではこれは逆転した「スター・チャイルド」のストーリーというか、その生成ではなく、壊れて行くさまをこそ捉えた作品ではないのかと思ってしまう。
 捕食者であるスカーレット・ヨハンソンは、象皮症の男を知ることでその「人」の「容貌」/「セックス・アピール」ということを意識するようになり、その後の男との性交渉で「なに、これ!?」みたいなことから崩壊して行くようではあるけれども、その前に市中で彷徨中に転倒するあたりからも、すでに壊れはじめていたという観方もできるのだろうか。また、象皮症の男に彼女が何を見たのかということもよくわからないわけで、そのあとの性交渉での彼女の狼狽ぶりもまた、その理由はよくわからないわけではある。しかしとにかくは彼女は「この容貌をした<わたし>とはどんな存在?」という疑念に囚われたことはまちがいはない。
 補食の「罠」であった存在が、自らがなぜ「罠」として機能しているのかと自問する。そのことから「わたしとは何?」という根本疑念に囚われ、自己放棄して行く。彼女は男に火をつけられなくとも、すでに崩壊への道を選んでもいるのだけれども、彼女の真の内面は黒い煙と共に空に昇って行き、わたしなどの知るところにはなり得ない。しかし観ているわたしは、そのことを想像したいと欲している。想像力を喚起する、優れた作品だと思う。
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