みゅうちょび

アンダー・ザ・スキン 種の捕食のみゅうちょびのレビュー・感想・評価

3.4
映像表現が素晴らしです!3Dなどの視覚効果に頼らない映像にはまだまだ可能性がある。これは、ブランドン・クローネンバーグの「アンチヴァイラル」を観た時も感じました。

ミニマリズムが非常に効果的で、予備知識なしでも、実に巧みな表現力で主人公の役割や心?の動きがわかるばかりでなく、ミュージックビデオ出身の監督ということもあり、映像とそこに流れる不思議な音楽のコラボレーションが見る物を未体験の世界へといざないます。

どこからともなく現れた謎の女。彼女の準備を助ける謎のライダー。
街に出た女は、男が好みそうな服や化粧をし、車で慎重に、独り者の男を物色しては部屋に招き入れる。

漆黒の闇の中に服を脱ぎながら歩いてゆく女、それを追ってやはり服を脱ぎながら歩いてゆく男は真っ黒な床の中に沈んでゆく。恐れることもなく、ただ飲み込まれてゆく男達。

アンダーザスキンというタイトルの通り、この男達も、皮膚一枚剥ぎ取ってしまえばただの血と肉と骨となり流れて消えてゆく。

目的はなんなのか?

邦題の通りの捕食なのか?それともサンプリングなのか?

人間の皮膚の感触を知るうちに、次第にその肌に包まれることの心地良さに目覚めてゆく女。肌の触れ合い、肌の温もり、そこに芽生える感覚とも感情とも言えない何か?

人はその肌の温もりや感触を愛し、求め、渇望する。

無機質な光の中で、そして漆黒の闇の中に浮き上がるスカーレット・ヨハンソンの豊満で美しい肢体は、エロティシズムというひとつの目的のために創り上げられた完璧な女体以外の何物でもなく、男達はただ魔法にかかったかのように吸い寄せられてゆく。その説得力が凄いと思います。

見る人を選ぶ作品ではありますが、ハマればすごくハマる独特な世界観が魅力的な一本。

マーク・ロマネクが監督したマドンナの「Frozen」というPVを観た時、マドンナの姿を見て、砂漠の何処かにこんな美しい生き物が本当にいるのではないかと感じたのととても似た感覚を覚えました。

結末はとても残酷で悲しい。
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