グラッデン

ニュースの真相のグラッデンのレビュー・感想・評価

ニュースの真相(2016年製作の映画)
4.0
ブッシュ前大統領の軍歴詐称疑惑を巡るニュース報道の顛末を描いた実話に基づく作品。

報道とジャーナリストを題材にした作品としては、日本でも今年春に公開された『スポットライト 世紀のスクープ』が記憶にも新しいところ。
同作品では、取材チームが足で稼ぎ、メモを取り、時には涙を流しながら真実を求めていく描写を丁寧に描いたことが印象に残りましたが、本作『ニュースの真相』においても、報道が世間に届けられるまでの取材者の苦労を軸に描いております。
一方、本作の舞台がテレビ報道であり、そうした現場だからこそ起こり得る「時間との戦い」の存在を随所に感じさせつつ、細かいカット等を駆使してテンポ良く、スピード感のある描き方をしていたことが印象に残りました。

ただし、本作の見所は、その先にあったニュース報道の「崩壊」を描いた点です。もしかしたら、20世紀までのメディアであれば、物語はニュース番組が放送された時点で終わっていたかもしれません。
しかし、現在ほどではないにしろ、個人の発信力が強まってきた頃のインターネットという新たな情報メディアの存在が登場します。ネット発信の指摘がニュース報道を揺るがし、火消しが追いつかないレベルに「炎上」していく姿は強烈なインパクトを感じました。さらに、ケイト・ブランシェット演じる敏腕プロデューサーが精神的に追い詰められていく様が連動するように映し出されることで撤退戦の過酷さを印象付けられました(ケイト様目当てで見に行った当方としても、この辺の怪演技ぶりには大満足でした)。

以上のように、作品の前半部はテレビ放送とともに歴史と信頼を重ねてきた報道の裏側に焦点を当て、後半部は現代におけるメディア環境の変化を描いていたと整理することができると思います。
00年代以降のメディアの最も大きな変化は、情報を発信する力が個人にも付与されたことで、テレビや新聞といった既存メディアからの一方通行ではなくなった=双方向が実現したことだと痛感しました。ロバート・レッドフォード演じる看板ニュースアンカーは、そうした時代の岐路に立たされてしまったのではないかと感じました。

終盤に語られた「報道とは信頼の証拠」という言葉が非常に重く感じました。報道に限らず、SNSを通じて情報発信することが非常に手軽になった現在だからこそ考えておきたいテーマではないかと。