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劇場版 稲川怪談 かたりべのJAmmyWAngのレビュー・感想・評価

劇場版 稲川怪談 かたりべ(2014年製作の映画)
2.9
映画それ自体としては劣化版コワすぎ乙としか言いようがないんですけどね、だけどそんな身も蓋もない捉え方はよせや~い(笑)ってんで観ていく内にですねぇアタシ気付いたんだ、コレ、稲川淳二という人の本質的なモチベーションを描くという意味においては圧倒的に正しい。

簡単に言えば、怪談が好き過ぎて頭がおかしくなってしまった人があ~でもね~こ~でもね~といって周りの人に迷惑を掛けるという怪談中毒者の話でしかないんだけど、そもそも「怪談」というものはあらゆる物語と同様に、語られ共有される行為の中においてしか存在し得ない認識的な受動性がその本質にある。

(劇中における)稲川淳二という人は、様々な怪奇現象やそれを生み出した人間的なヒストリーを拾い上げては怪談としてまとめ上げ、語り部として発信する事で他者の認識を獲得し、それらを世界に存在させていく事を自身の使命としているワケです。

実際の稲川御大が全く持ってこの通り怪談に命を捧げているかは分からないけど、少なくともこの人の根底にはそうしたモチベーションが横たわっていると信じさせる厄介な佇まいを、御大はしっかり見せ付けていると僕はそう思いました。

なぜなら今作で見せる御大の笑顔というものは、社会的なコミュニケーションの為の表情という役割からはことごとくかけ離れていて、それは最早怪奇を認識した剥き出しのピュアネスそのものに他ならないワケです。そうするとこの人やっぱりちょっとイッちゃってるんだけど、それ故に御大の崇拝とも言うべき根源的な怪談愛を僕は信じたいなあと、そう思わせられたところで意識がスゥ~っとなくなっちゃった。

「でもね、淳ちゃん、そうした想いを感受する事は出来たけど、それでもどうしようもなく怖くないホラー映画って、この世の中にはあるんだね……」

Aさん、今でも飲みに行くと、こう言うんですよ。
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