Yoko

沈黙ーサイレンスーのYokoのレビュー・感想・評価

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)
4.1
 17世紀初頭のポルトガル。
イエズス会に属する”ロドリゴ”、”ガルペ”両神父のもとに、布教のため日本に赴いていた”フェレイラ”神父が棄教したという報告が届いた。
師でもあった神父の棄教をとても信じられない彼らは日本へ渡ることを決意する…。

 原作は5,6年ほど前に読んでいたので粗方のストーリーは把握してからの鑑賞。
スコセッシによる映像化ということで期待が高まっていたが、期待以上に仕上がっており、改めて素晴らしい作品であったと痛感。
 というよりも、原作を読んでいた時よりも歳を重ねることで宣教師たちの痛切な苦悶やジレンマを更に深く読み取ることができるようになり(映像化によってイメージが具現化されたことも相まって)、そういう機会を与えてくれたというだけでこの映像化は自分にとって有り難いものであると感じる。

 タイトル通りの沈黙が作品全体を覆う中、風や虫の音といった環境音。「静」だけでなくスペクタクルとしても迫力のあるロケーションを選んでいるなと思わされる。
 何よりハリウッドでありがちな「勘違いされた日本像」というのが美術面においてほぼと言っていいほど存在しなかったことは好感が持てる。
コメディ路線であればこの勘違いもメリットとなることもあろうが、超がつくほどの生真面目な『沈黙』においては世界観を破壊する害悪であると言えるだろう。
 
 監督お馴染みの暴力描写については、地面に痕跡を残す血の演出などから芸術志向を感じた。
一瞬の爆発力を見せる抜刀のアクションが放つ「動」、静けさとともに残された血が放つ「静」の融合。
『ディパーテッド』で、この融合は見ることが出来ない。

 暗闇にポォーっと浮かぶデウスが放つ台詞の緊迫感には思わず身震い。
スコセッシの『沈黙』に対する真摯な態度によって映画『Silence』は完成されていたのではないでしょうか。
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