TaiRa

ソング・トゥ・ソングのTaiRaのレビュー・感想・評価

ソング・トゥ・ソング(2017年製作の映画)
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100点満点で0点なのではなく、0点満点で100点出して来るという何時ものマリック作品。

『ツリー・オブ・ライフ』以降の自伝シリーズが一段落した後に残り物で作った様な感じ。撮影時期が2012年くらいなのでみんな微妙に若い。業界モノという意味では『聖杯たちの騎士』(改めて意味分からん邦題だな)の姉妹編みたいなもの。同時期に撮ったからキャストも一部被ってる。父親や弟との関係など、過去作と同じ様な場面をまたやってる。前作が映画業界に嫌気が差して堅気になったけどやっぱカムバしようかな、という自伝的な話だったけど、今回は堅気になって田舎で暮らそうエンド。その先に待ってるのが『トゥ・ザ・ワンダー』かと思うと面白い。この3本で無限ループが成立する。いつも通り脚本もろくにない即興演出で大量の映像素材をストックする形。ファーストカットが8時間あったらしい。約5年かけて今の形にしてる。無意味のコラージュ。無意味な瞬間の連続を俯瞰すると何か意味がある気がしてくる。その錯覚の俗称が「人生」。この制作方式はとにかく映像の無意味さが徹底しており、イチャコラ映像をいかに美しく撮るだけが問われている。そういう意味で作家の内省すら存在しない今作が最も無意味なので究極である。マリックの映像は素人がスマホで撮った何の意図もない「想い出映像」の延長線上にある。その最上位。だからスマホの新機種が出た時に、そのカメラ性能をアピールする為にマリックやルベツキに映像を撮ってもらうのだ。我々の撮っている無意味なイチャコラ映像(撮る機会ねえよ)やドンチャン騒ぎ映像、旅先の景色映像の最果てがマリック作品。つまり「映画」とは別の表現形態。そういう前提があるので次作にあたる『名もなき生涯』は物足りなかった。あれは意味があり過ぎ。
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