小暮宏

アラビアの女王 愛と宿命の日々の小暮宏のレビュー・感想・評価

2.5
イギリスの上流階級に生まれて才色兼備でイギリスのどこの出先機関だろうがアラビアのどこの部族だろうがモテモテなヒロインが、最初に恋に落ちた良さげな男がギャンブル狂で借金を抱えているのを理由に父親に反対されて結婚できないうちに事故死(ということにされたがおそらく自殺)したのを引きずってついに生涯独身で通し、それがきっかけなのかどうかおよそ西洋世界にとっては未知の中近東を旅してまわるという、どうもノリにくい話。

ニコール・キッドマンならそりゃモテモテでしょうよと思うが、砂漠を旅し続けてお肌つるつるってどうよ。

アラビアの部族の描き方も「アラビアのロレンス」批判本が何冊も出ているような現状で五十年一日のようでは困ります。ラストの字幕でヒロインが部族間の境界線を引いたって出るが、それ後年の中近東のトラブルの元ではないか。

砂漠の風景は綺麗だけれど、70mmで見ている目には4Kだからどうという感じはしない。ドローンを使ったのだろう大俯瞰ショットは新鮮。

ロバート・パティンソンがロレンス役で出てくるのにびっくり。実際のロレンスは黒髪だから容姿はピーター・オトゥールより近いとはいえるし、変人ぶりはよく出ているが、イメージを壊すことが目的化しているみたいな感。

ヘルツォークとしては辺境でロケしたがる志向は満足させられたか知らないが、クラウス・キンスキーと組んだ時のような辺境をものともせず突破していくデモニッシュな迫力は出ようがない。
小暮宏

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