マリオン

ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男のマリオンのレビュー・感想・評価

3.5
ソウルミュージック界のレジェンドとして今でも音楽界に様々な影響を残し続けるジェームス・ブラウンの伝記ドラマ。ジェームス・ブラウンの天才的な歌声とパフォーマンスが完全再現され、それはもう見入ってしまう。だが少々変化球な物語の進め方に邪魔をされてしまった部分も…。

何より素晴らしいのはチャドウィック・ボーズマン演じるジェームス・ブラウンの完全コピーぶりだろう。ソウルのこもった歌声、独特なステップの取り方やダンス、マイクパフォーマンスなどの体技がものすごく様になっている。「ゲロッパ!」でお馴染みの「Sex Machine」や「I Feel Good」などの名曲を奏でながらいきいきとステージで動き回る姿や佇まいが本当に素晴らしい。彼の演技やライブを見るだけでも素晴らしいと思える映画だろう。何曲かしかジェームス・ブラウンの曲を知らない自分でも最高だ!と思ったぐらいだ。あと癖のあるしゃべり方も印象的だ。

今作はジェームス・ブラウンの半生を描く訳だが、題材や内容などいたる箇所で「ジャージー・ボーイズ」と似ている。どちらもショービジネス界の歴史に残る歌手だし、荒んだ子供時代を過ごしてきたある天才的な才能を持つ人物とそれを支える親友的なパートナーとの栄枯盛衰を描くというのもとても似ている。画面越しに観客に語りかける演出も同じだ。

ジェームス・ブラウンにとって最高のパートナーとはボビー・バードだ。ジェームス・ブラウンを刑務所から救い、フェイマス・フレイムズとして名を馳せ、メンバーやバンドがやめていっても彼がどんなに孤独であろうとついてきた男だ。ジェームス・ブラウンが残した功績は大きい。音楽としてはもちろん、黒人差別があった激動の時代に自分のソウルだけでのし上がり、自分だからこその方法で国人たちに希望を与え、白人をも虜にさせる。他にも様々な工夫が凝らして生きてきた。だが天才故に孤立していく…後半部分では様々な人物達を失っていくもの悲しさがある。最後の歌に込められたメッセージは感動させる。

だが今作ではストレートに半生を描くのではなく、時系列をシャッフルして描かれる。例えば自分を捨てた母が訪ねてきたシーンの後に、少年時代に娼婦として働く母を見つめるシーンが差し込まれる。そして訪ねてきた母との会話はラスト付近に差し込まれる。もちろんジェームス・ブラウンの半生を意味付けした繋ぎ方ではあるのだが、正直言うとそんな変化球でなくストレートに半生を見たかった。冒頭の時系列シャッフルに関しては特に意味も見いだせなかったし…。またもう少しそこは描いた方が面白いのではと思うエピソードがさらりと流されるのも勿体ない。

チャドウィック・ボーズマン以外にもボビー・バードを演じたネイサン・エリスや、ベン・バードを演じたダン・エイクロイドが印象的だった。テイト・テイラー監督作の常連ヴィオラ・デイヴィスやオクタヴィア・スペンサーも出演し脇を固めている(まだ長編2作だけど)

伝説として名高いジェームス・ブラウンが劇場で文字通り蘇る様はファンならば必見だ。あとやっぱりチャドウィック・ボーズマンという役者は素晴らしいなと思った。
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