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オオカミは嘘をつくのkasparのネタバレレビュー・内容・結末

オオカミは嘘をつく(2013年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

満足度75 イスラエルイスラエルイスラエルと三回唱えてから見ると面白くなったり、ならなかったり(?)「これがイスラエルだ」という自嘲映画でもあった「ザマッドネス」の監督コンビの新作、今回も前作同様に「これがイスラエルだ」が強く出た映画でした、多分(多分!?)
で、まずは監督さんたちの興味深い話について。監督の二人は映画学校の教師(評論家)と教え子の関係だったというのが面白い、「ジャンル映画の中に、政治性や社会性(問題提起)を忍ばせる方が直接的に描くよりもクレバーだ」という考えのもと映画製作するという映画評論家らしいスタンスなのが素晴らしい。この二本によって、それまでジャンル映画が(ほとんど)なかった(正確にはあったがなくなったらしい)イスラエル映画界に衝撃を与え、映画界全体を変えてしまったらしい(あやふやかよ)。勿論それは、この二本がジャンル映画としての完成度が高く(娯楽性が高い)、さらに内包するメッセージがイスラエル社会を的確に捉えてるからに他ありません、多分。
(評論家として)世界中のジャンル映画に触れる中で、これがイスラエル(社会や人)なら?と常に考え、それらを作品の中に落とし込んだという。そのことによりジャンル映画でありながらそれがただの模倣ではなく、この映画ではならなければならない、イスラエル映画でなければならないジャンル映画となってる。
いつものようにだらだら続けます。文章おかしすぎるけど、だれも読んでないやろしまぁ良しとしとこう。さて何を書いてたかもよくわからなくなってきたんで、内容についてネタバレします。
でまぁ何を描いてるのかというと、正義(逆を言えば悪)についてです。ザ・マッドネスと結末が同じ(何も解決せずに死体だけが増えていく、その原因は「イスラエルだから」)ではあるけれども、さらに多重の構造になっていて、どの国(人)にも当てはまる普遍の問いかけにまで昇華してるのが凄まじい。
英題は「BIG BAD WOLVES」これが原題なのかはよくわからないけど、オープニングの赤ずきんモチーフや途中のお菓子(キャンディ?)が目印になってるシーンとか、明らかに寓話を意識していて、伝わっていくべき寓話を作り出そうとしてるのが面白い。これは大人のための寓話ですよということ、寓話は事実を反映し、語り継がれていくものであることから、この映画は全て事実に基づいた暗喩の映画であることがわかります。
大きくて悪いオオカミたち、大きなオオカミたちが悪を生み出していく、つまりは悪い大人たちが子供(未来)を犠牲にしているということ、そしてそれは主要な登場人物だけではない、少ししか出てない署長(すでに悪が子供に伝わっているのも大事なポイント)、妻、同僚、母、全ての大人が実は悪を生み出している(観客は映画的な悪としてどこかに境界を引くので、この映画では3人または4人がオオカミとなるかもしれないが、映画というのを除けばどこに境界をひくのだろう?という問い)
これは寓話ではあるが真実に基づいている。大人のための寓話、大人へのメッセージ。
アラブ人に対する漠然とした恐怖に慄く警官、より強い暴力で事態を悪化させる元警官(?)の被害者の祖父、孫が死んでるのに呑気な祖母、などなど、全てが真実に基づいていると考えると、日本人からすると(もしくはジャンル映画の方程式からすると)納得のいかない結末も納得がいくものになるかもしれない。
真実に基づいて、この結末でなければならなかった理由があるのかもしれないし、真実では違うからこそこの結末にしたのかもしれない。いい加減なことはいえないけど、映画的にはもっとあやふやにすべき結末になのに、観客には事実がハッキリとわかるようにしたのは、ただのストレンジャーとしてのアラブ人(イスラエル人が自分をみつめるための鏡としての存在)が犯人と思わないように(思う人が出ないように)配慮したのではとも思うのでした。
どんだけかくねん、まあ、ダラダラ書いたので、とりあえず、すみませんでした。
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