がちゃん

魔女卵のがちゃんのレビュー・感想・評価

魔女卵(1984年製作の映画)
3.8
冒頭、けばけばしいメイクの女性ロッカーが派手なロックを叫んでいる。
その様相は、まさに積木崩しの主人公の少女であり、『エクソシスト』のリーガンのようにも見えた。

そんな、どちらかというと下品なプロローグで始まる本作。
1984年の大阪が舞台です。

主人公のレイは大阪の公立高校に進学する16歳。
いわゆるヤンキーで、ちょくちょく暴れることも。

ある日、レイとその友達の3人でミナミを歩いていたところ、東京から来たと思われる男3人にナンパされる。

そして、南港に連れていかれ、そこで暴行されそうになる。
それを助けてくれたのが、暴走族のリーダーをしているサブ。

後日、サブが居るといっていた店へ顔を出し、そこで出会ったロックバンドのギターリスト大介にレイは一目惚れ。
そこから、レイはそのバンドのグルーピーとなり学校もやめて大介を追っかけるのだが・・・

オープニングで、こりゃ殺伐とした荒れる若者映画かなと少し構えていたのですが、ストーリーが進むにしたがって、なんだこれ、純愛映画じゃんと思うようになり、クライマックスでは悲恋映画におもわれるくらい泣かせて、最後は爽快なハッピーエンドになるという感情ジェットコースター映画でした。

古臭いと言えばそうなんですけど、昔のモノクロ純愛映画を彷彿とさせる本作嫌いじゃないです。

大阪でバンドをやっていた若者たちの聖地である、『オレンジホール』や『バナナホール』がでてくるのが懐かしく、雪のシーンがあるのですが、滅多に雪の降らない大阪であのシーンが撮れたのはおそらくあの日だななんて思い出に耽ったりできました。

主役のレイを演じた渡辺祐子は、序盤はなんだかただ耐え忍ぶだけの魅力のないヒロインだなと思いながら観ていましたが、次第に魅力的に見えてきて、ラスト近くで啖呵を切るシーンには思わず拍手を送ってしまいました。

そして特筆すべきは、家出したレイを受け入れる暴走族の総長サブを演じた我王銀次。
可愛い女の子が転がり込んでくるシチュエーション。手を出したい欲求を抑えながらレイの恋のアシスト。久々に見る硬派の男でしたね。

33歳での逝去は早すぎます、惜しいです。

音楽の使い方も優秀で、特に東京から大阪に戻ることになったレイのバックに流れる、大神瑠璃子の歌う『大阪で生まれた女』が秀逸。

観光客が行くようなステレオタイプではない日常の大阪をうまく描いているという点では、井筒和幸監督の『ガキ帝国』(1981)を彷彿とさせてくれます。

その他、ロックメンバーの名前や曲名、エピソードなどにハードロック好きにしかわからない小ネタが挟んであるのも素敵ですね。

少し注文を付けるとすれば、俳優たちの大阪弁がネイティヴ関西人にはちょっと違和感を覚えたこと。
でも、上出来です。

監督は、ピンク映画出身の和泉聖治。
最近ではテレビドラマの『相棒』シリーズで有名ですね。

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