塩湖

螺旋銀河の塩湖のレビュー・感想・評価

螺旋銀河(2014年製作の映画)
4.0
前半きつかったけど後半から驚くほど面白くなった。添削という暴力をまなざした映画だと思う。自身の書いたストーリーに赤ペンを入れられることを一旦は拒否した主人公の綾だったものの、担当のラジオドラマはだんだんと他者の手に塗り替えられていく。シナリオに盛り込んだ「屋上でランチをする」という実際の体験をもとにしたくだりを先生にダメ出しされる場面が凄い。現実から虚構への転換とその修正が、全てこの『螺旋銀河』というおおきな虚構のなかでなされることの迫力にしびれる。そして幸子が徐々に綾と化していくのがホラーで、『王国』における人間の声や仕草のグラデーションが非メタの領域で展開されている感じがあり、この辺りから一気に映画が面白くなった。他者と交わることの弊害をいくつか描いた先に、しかしそこからしか生まれ得なかった「ラジオドラマ」という確かにかすかに光る存在を画面のなかに閉じこめた収録シーンは(ちょっと寝たけど)重要な時間だろう。さいご、幸子からお菓子を受け取った綾がふっとカメラ目線になったときゾワッとしたけど、隣の幸子を確認すると彼女はカメラから少し外れた場所に目線を向けており、放送の音が聞こえ始めたことから二人はラジオのあるほうを見ている様子。しかし何度確認しても綾はカメラのほうを見て観客の〈わたし〉と目を合わせてるようにしか思えなくて、変なざわつきを覚えたまま終わった。幻覚であってほしい。
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