特濃ミルク

野火の特濃ミルクのレビュー・感想・評価

野火(2014年製作の映画)
3.4
 だいぶ前に原作を読んでいたので、色々思い出しつつの鑑賞になった。原作の重要なエピソードを拾いつつも非常にスピーディなテンポで進むので、内容としてはよくまとまっているなという印象を受ける。
 あとはブレまくる視点や、立ち登る野火の煙、日本軍殲滅シーン、その他諸々の演出でこちらも田村一等兵と一緒に、蒸し暑いジャングルの中を彷徨しているかのような臨場感があった。スピーディな場面転換も、主人公の記憶の断片を体験していると錯覚させるために必要だったのかなと思う。
 原作者の大岡昇平が極限状態のジャングルで実際に何を見て、何を感じたのか。それは本人にすら分からない部分もあるだろう。飛び散る臓物、死体に群がる蛆虫、口にした「サル」の肉、天上の神の存在…。それでも、そんなこんなが全て最後の祈りに集約されていたのだろうな。
 「戦争を知らない人間は、半分は子供である。」原作を読んだ時に強烈な感銘を受けた言葉だ。本当の意味で「戦争を知る」とはどういう事なのか未だに答えは出せていないが、これもきっと祈りの言葉だったのだろうと思った。
 
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