くますけ

野火のくますけのネタバレレビュー・内容・結末

野火(2014年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

首もとをぐっと座席に押し付けられてるようだった。
それほどの圧力。圧倒的だ。

時折差し込まれる、畏ろしく美しい自然の姿。
その中でぼろぼろに血みどろに倒れていく人間たち。
なんてどうでもいいことをしてるんだろう、この人たちは。

死ぬ恐怖、殺す恐怖、奪われる恐怖、見失う恐怖、恐怖、恐怖、恐怖。
その極限で何より怖いのは他人といることだ。
食べてしまうかもしれないから。
それはもしかしたら死ぬより恐ろしいことなのかもしれない。
人であることを放棄する瞬間。

これまでの塚本監督の造形表現の特殊が戦争映画でこんな風に活きてくるとは。
塚本監督の新しい一面をみた気がする。
崩れた顔、吹き飛んだ腕を奪い合う様、飛び散った脳みそ。
あれこそが戦場なのか。

永松役の森優作くんがとてもいい。
あの、踏み越えてしまう率直さ、危うさ、純粋の代償…本作にも出演していた山本浩司さんの若い頃を思い出した。
顔も似てるかも(笑)

人であることを放棄したものは、もう、戻れない。
生きるために越えた一線。
誰にも救えない罪。
食事のたびに繰り返す殺戮は儀式のように…

「野火」
山に火が燃えている。
あそこにいけば人がいる。
食べるものがある印だ。
くますけ

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