ハレルヤ

ゴンドラのハレルヤのレビュー・感想・評価

ゴンドラ(1987年製作の映画)
3.8
母親と2人で暮らす小学5年生の少女かがり。飼っていた小鳥が傷付いているところを、ゴンドラに乗って窓拭きの仕事をしている青年の良が見つけた事で、孤独を抱える者同士の2人の交流を描いたヒューマンドラマ。

パッケージだけ見たら一瞬ホラーかスリラー映画かと勘違い。実際は実験的でありながら深く心に染み込むような内容のドラマでした。これパッケージでかなり損してるぞ。笑

両親は離婚していて母親も夜の仕事で不在がち。学校でもからかわれる存在でどこにも居場所が無く、都会の中で息苦しさを感じながら生きているかがり。高校卒業後に青森から上京して、ひたすら高層ビルの窓拭きの仕事をする毎日の良。

窓越しの偶然の出会いから互いに居場所を見つけようとする物語。かがりの飼っている小鳥が死んだことで、弔うために良はかがりを故郷の青森の下北半島へと連れていく。

前半はひたすら幻想的な映像表現が冴えるドラマ。自主製作映画だからこそ固定概念にとらわれない自由な発想を感じました。後半からは良とかがりのロードムービー。下北半島の田舎ながら美しさが存分にある自然描写が堪能できます。

セリフも必要最小限。その分登場人物の表情が大事になってきますが、特にかがりを演じた上村佳子の表情は本当に秀逸。複雑な感情を抱いたままの前半と、良を通じて自然や色んな人と触れて明るさが見える後半での表情の違いは必見です。映画には本作しか出演していないのが残念。

つい3年前までDVDもBlu-rayもリリースされていなかった本作。今ではサブスクでも見れるので、隠れた良作で留めておくには勿体ない。邦画特有の良さが出たヒューマンドラマが好きな方なら間違いなく見る価値はあります。
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