ゴンドラの作品情報・感想・評価・動画配信

「ゴンドラ」に投稿された感想・評価

このレビューはネタバレを含みます

高層ビルを舐め回すように映すカメラ。まるで人間がビルの迷宮に閉じ込められているよう。そしてゴンドラから見下ろす街並みは、海の底を眺めているようだ。都会と海はさほど変わりがないのかもしれない。この世界全体が迷宮で、人間一人一人が見えない壁で覆われているような。

レストランで食事を楽しむ外国人カップルとガラスひとつ挟んで、変わってしまう世界。そこに見えているのにたどり着けない世界。断絶。
病院のドアから鳥の死体を持った医師が出てくる。ガラス戸越しに両親の喧嘩を眺める。本作に登場する"空間"は、監獄のようだ。家、病院、街、海、風呂、店、病院。全てが一つの、奥行きの無い"場所"として描かれている。そして、それらは人間を縛り付ける巨大な牢獄。
一見それと対比になっているかのような海の描写だが、この映画は田舎を美しいものとしては描かない。都会には都会の、田舎には田舎の息苦しさがあるのだ。
「まだ早いのに暗いんだね」「東京みたいに街灯がないからさ」
上記の台詞の通り、都会と田舎の違いは明るいか暗いかしかない。良いも悪いも、自分の置かれた"場所ではなく、環境によって変化していく"のだ。
「なんでみんないなくなっちゃうのかなあ」「生きちゃいけないからさ、ここにいても」「じゃあ昔は?」
場所=土地が自分のアイデンティティと切り離されていく時代。このシーンは後半の伏線になっている。

良の田舎に行く後半では、前半では牢獄的な描かれ方をしていた"場所"(田舎という意味ではなく、土地という概念)が好意的に描写されることになる。廃棄物からチーコ(鳥)の墓を作ったり、川で泳いだり。これは、良にとっての"土地と自分が分裂した"ことを示している。
そして、良はかつての父親と同じように舟を作る。
自分のアイデンティティは場所=土地に帰属するものではなく、それとは独立したものであることを良は知る。それが「どんど晴れ」であり、これからの時間を自分の足で泳いでいくかのように、海の上で船を漕ぐことなのだ。この光景を見た良の父は泣く。自分が成し得なかったこと、得られなかったものを息子が手に入れたのだと理解したのだ。居場所とは見つけるものではなく、作っていくもの。
良と同じ舟に乗るかがりもまた、幼いながらも"自分とは何か"ということを考えているかもしれない。

かがりの弾く音程の狂ったピアノは、かがり自身の叫びだ。行き場の無い、しかし如実に心の中に渦巻く感情。
プール後に眼を洗うシーンで、かがりだけ他の人から急かされない="いない"ことになっていたり、棒で地面に描く絵を良に「うまいんだねえ」と言われたら、すぐに消してしまったり。これらのことから、良だけではなく、かがりもまた"世界の中の自分という迷宮"に入ってしまっていることが伺える。

劇中で何度も登場する蜘蛛は、母性のメタファー。本来母親から受けるはずの無償の愛を知らないかがりは、"そこにいるのにここにはいない"蜘蛛の姿に理想の母親像を見る。そして、その姿は良の母でもある。良の家の風呂場に現れる蜘蛛は、"この人はお母さんだけど、私のお母さんではない"というかがりの疎外感の顕れではないだろうか。

そんなかがりが良に"連れられて"大海に誘われる。「君はこれから、無限に続く海に身を預けることができるんだよ」と、大自然が彼女に語りかけているよう。良が現在(いま)であるなら、かがりは未来だ。何て美しい映画だろう。

ちょっと深読みしすぎ?
だけど、カットの数だけ色々な考えを頭に浮かばせてくれる映画だった。そして、観た人の数だけ解釈があると思うので、もう一度別の人間になってこの映画を観賞したい。もしくは、二回目の初体験として。

このレビューはネタバレを含みます

文鳥の痛そうなシーンで挫折してしまった。残り半分はまた今度みます…
こんなのまでアマプラに登場⁈
ありがたや、と思い見始めたら思い出した。
これ観てた。
ただただ好みでなく脳内消去していたんだな。

いかにも映画でござい感がキツいが、撮影は巧み。

メルローズのデカロゴが入ったバスローブを着る木内みどり。
DC丸出しの衣装で青山一丁目の交差点を歩く木内みどり。
好きだったのはそんなとこ。

〜〜

今日の一曲

ロープウエイからこんにちわ  キリンジ  

https://m.youtube.com/watch?v=k7iyA69aqwI
sonozy

sonozyの感想・評価

4.0
1986年完成の伊藤智生監督の長編1作目で、2017年にリバイバル上映されロングランヒットしたという作品。
青森の漁村から出てきて高層ビルの窓清掃でゴンドラに乗って作業をしている孤独な青年・良。
離婚して夜の仕事をしている母れい子(木内みどり)と二人マンション暮らしの孤独の少女かがり(11歳)。
ある日、二人は出会う。

「もう居場所がない」と家出したかがりを連れて列車を乗り継ぎ良の実家へ向かう。
かつてDV&酒乱だった良の父(佐藤英夫)は病気で顔や腕が麻痺。優しい母(佐々木すみ江)と二人で暮らしている。

ゴンドラから地上を見ているうちに海が重なる良の幻覚。
学校のプールで初潮を迎えるかがり。
かがりの遊び相手だった2羽の文鳥が激しく争い1羽が死んでしまい、その死骸を手放せないかがり。
かがりが手にしている音叉とハーモニカ。父(出門英)の記憶。
良が小さなアパートの部屋で汗まみれになり木を彫りつくる船。
下北半島の岩礁と海、朽ちた船・・・といったモチーフやシーン。

カメラワークも素晴らしく、監督インタビューによると「タルコフスキーの『惑星ソラリス』の冒頭に、川のなかで藻が揺れている素晴らしいショットがありますが、全篇ああいう画で構成したかった。」と。

なにより、主人公かがりを演じた当時12歳の上村佳子さんの存在感。
実際にかがりのように心を閉ざしていて、淀んだ表情でぶっきらぼうに言葉を放つそのままの姿だそう。
良を演じた界健太は監督の弟だそうで、不器用で時間が止まっているような感じが決め手となったようですが、この二人のキャスティングが全てですね。
まさに発掘良品的な作品でした。
yuukun46

yuukun46の感想・評価

3.5
アマプラの作品紹介に「映画史上燦然と輝くインディーズ映画の至宝」とあったので気になり視聴。前半はまさにインディーズといった若干難解な表現がありますが、後半は安らげる内容でした。木内みどりさん等も出演してますが青年と少女二人の主人公台詞も少なく淡々と進んでいく感じでした。その後どうなったのかラストにモヤモヤ。
「映画史上燦然と輝くインディーズ映画の至宝」とまで言うくらいならそれ相当の作品なんだろうと思い、無視できなかった。

すごいもの観ちゃったなーと思う。主役の少女は一般の子みたいで棒読みなんだけど、それでも激しい感情が画面中に渦巻いてて恐怖すら覚えた。最後は優しく終わったけど、画がとても美しくて予想外に泣いてしまった。
TAKA

TAKAの感想・評価

3.3
セリフの少ない作品。
都会で暮らす孤独な少女と青年の話。
2人は一緒にいることで救われたのかな。
耳鳴りの世界の音がした。
子供の頃合遊びに行った田舎のなつかしいお風呂。
記録。
2020年130本目
少女とおばさんがお互いに背中を流し合うシーンだけで見る価値あり。胸が熱くなった。
ざべす

ざべすの感想・評価

5.0
わあああああ
この一本は一生心に居続けるわ…
誰が見ても分かりやすい具体的なストーリーが語られるわけではないんだけど、一部の人間には忘れられない原風景が映るはず。

「“映画”がこちらのみで、後にアダルト業界の巨匠となる伊藤智生監督が残したインディーズ界の至宝」
という文言が気になって鑑賞したんだけど、観てなかったら今生を悔いてたわ……ありがとう。

内容は、
うん「救い」かな。
宗教でも、一方的でもない、お互いに利があるの。
ラストも、悲しい方なのか、戻ってくるのか(どこに戻るのか)、見る人によっての「どんど晴れ(おしまい)」がある。

あ、でもこの映画と相性よくないと中身がない映画に見えると思う!!
エンタメ性が皆無だからね。仕方がないね。

あ、でも映像的にも立体に撮れる人(しかも日本で)なんだよ!!
構図も良い。
(しかし映像が中身と結びついて立体を成しているので、結局一部の人にしか伝わらない)

欠点なはずの
・ お仕事そんなに休んで大丈夫?
・ 素人演技
も目につくけど、そういう世俗を排除した要素と素朴さが、自分にはかけがえなく美しく映った。
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