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ゴンドラのsonozyのレビュー・感想・評価

ゴンドラ(1987年製作の映画)
4.0
1986年完成の伊藤智生監督の長編1作目で、2017年にリバイバル上映されロングランヒットしたという作品。
青森の漁村から出てきて高層ビルの窓清掃でゴンドラに乗って作業をしている孤独な青年・良。
離婚して夜の仕事をしている母れい子(木内みどり)と二人マンション暮らしの孤独の少女かがり(11歳)。
ある日、二人は出会う。

「もう居場所がない」と家出したかがりを連れて列車を乗り継ぎ良の実家へ向かう。
かつてDV&酒乱だった良の父(佐藤英夫)は病気で顔や腕が麻痺。優しい母(佐々木すみ江)と二人で暮らしている。

ゴンドラから地上を見ているうちに海が重なる良の幻覚。
学校のプールで初潮を迎えるかがり。
かがりの遊び相手だった2羽の文鳥が激しく争い1羽が死んでしまい、その死骸を手放せないかがり。
かがりが手にしている音叉とハーモニカ。父(出門英)の記憶。
良が小さなアパートの部屋で汗まみれになり木を彫りつくる船。
下北半島の岩礁と海、朽ちた船・・・といったモチーフやシーン。

カメラワークも素晴らしく、監督インタビューによると「タルコフスキーの『惑星ソラリス』の冒頭に、川のなかで藻が揺れている素晴らしいショットがありますが、全篇ああいう画で構成したかった。」と。

なにより、主人公かがりを演じた当時12歳の上村佳子さんの存在感。
実際にかがりのように心を閉ざしていて、淀んだ表情でぶっきらぼうに言葉を放つそのままの姿だそう。
良を演じた界健太は監督の弟だそうで、不器用で時間が止まっているような感じが決め手となったようですが、この二人のキャスティングが全てですね。
まさに発掘良品的な作品でした。
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