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アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家のsonozyのレビュー・感想・評価

4.0
ヴィム・ベンダース監督と同じ1945年にドイツで生まれた芸術家アンゼルム・キーファーの生涯と現在までを2年をかけて完成させたという作品。

まったく知らなかった方ですが、ドイツの歴史、ナチス、ギリシャ神話、詩人...などを題材に、下地に砂、藁、鉛などを混ぜた、巨大なキャンバスに描く作品や、彫刻、インスタレーションなどを創造してきたドイツを代表する芸術家。

アンゼルムの過去のインタビューアーカイブもまじえながら、現在79歳という年齢にしては強靭な体格とスキンヘッドに鋭い視線のアンゼルム・キーファー本人も出演します。
巨大倉庫のようなアトリエや、旧レンガ工場跡地や、80ヘクタールの敷地を買い取り自らのチームで改造した巨大な空間に並ぶ、多彩な作品の数々。
その多くが描く時に昇降機が必要なほどの巨大さで、藁などを塗り込んだ巨大なキャンバスにバーナーで火をつけたり、光熱で溶かした錫?をキャンバスに落としていくシーンなどパワフルな作風も見れます。

再現ドラマのパートではアンゼルムの息子ダニエル・キーファーが青年期を演じ、幼少期をベンダース監督の孫甥アントン・ベンダースが演じてます。

ドイツ系ユダヤ人の詩人パウル・ツェランの「死のフーガ」を本人音声で読み上げるパートなど、ナチス/ホロコーストを忘れるべからずという強い思いや、哲学者のような静かな語り口が印象的。

6K & 3Dで撮影されたということで、これは公開されたら改めて3Dで没入したい作品です。
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