さす池

ブルー・リベンジのさす池のレビュー・感想・評価

ブルー・リベンジ(2013年製作の映画)
3.5
『グリーン・ルーム』のジェレミー・ソルニエ監督作品で名作との事だったので、早速レンタル。
原題は『Blue ruin』(青の破滅)。リベンジよりもこちらの方がしっくりとくるタイトルの映画だった。何がどうブルーなんだろ、と思っていたけど青を基調とした画面に加え、精神的にもブルーになるというか。

メイコン・ブレア演じる主人公ドワイトが、よくある復讐劇にみられる無我夢中で燃えるタイプでもなければ、戦術等には長けておらずとも緻密に計画し冷静に事を成し遂げるタイプでもなく。全てを奪われ熱意すら持たずにただ復讐しか道がないという面持ちで出所した犯人のもとに向かう姿にノスタルジーを感じた。単なるホームレスだったし喧嘩慣れもしていないので最初の殺しにも手こずり、思い切り負傷するもんだから上手くいってると言えるのかこれ、という緊張感が後を絶たない。この映画はそこが好みだ。

自らが破滅を辿る事を承知の上で始めた筈が途中で事件の真実が異なっていたことを知り、家族が殺害された理由も知る事になる。復讐という細い1本の糸を弱弱しく握りながら歩みを進めていたドワイトが、悩み抜き後悔するでもなく、姉家族に被害が及ぶのを防ぐためにも淡々と「もう止められない、終わらせたい」という思いだけで最後の行動に移るところが最高にブルー。

復讐は無意味であり、否応無しに連鎖を引き起こす。始めてしまえば途中で真実がひっくり返ろうとも止める事など出来ない。虚しさに溢れた復讐劇だが、いつでも返り討ちに合いそうな主人公がどことなく愛おしく、両家が実は持っている家族愛がきちんと描かれている良い脚本だった。
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