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オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分の映画mystyleのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

『すべてが壊れていく一夜、86分。見るというより、聴く映画。まるで、深夜のラジオドラマを聴いているような新感覚のストーリ展開。ハマる』

ワンシチュエーション、一人劇、
人生が壊れていく映画。


 今回の話は、愛人の子供の出産に立ち会うため車を飛ばす86分、車内の話。登場人物は一人のみで他は電話の声、シーンも車内のみというワンシチュエーションもの。


 本作の凄いところは、一人芝居であるにもかかわらず、電話が物語を重厚に作り上げている点です。想像力をくすぐり、映画というよりもまるでラジオドラマを聞いているかのような映画でした。でも、ラジオともまた違う。私は、ラジオの上位互換的な映画だと感じました。まさに、今までにない新感覚のエンターテイメントムービー。それを可能にしているのが主演のトムバーディーのピカイチすぎる演技力。車の中で繰り広げられるストーリーに真実味をもたせ、観客を見事に入り込ませています。

 まずこの映画、主人公に一夜にして振りかかるストレスが半端ないです。仕事のトラブル、愛人の出産、妻へ浮気の告白をするなど。しかも、深夜の高速道路の運転中に。愛人の出産に立ち会うという選択が、彼からそれまでの生活全て(仕事、妻、子供)を奪います。

 車内でのこの一人劇は、浮気という行為の結末を縮図にしたものだと思います。家族も仕事も失う、それがこの車内の中のみで起こっている。それでも彼は自分の“失敗”にケジメをつけるため車を走らせるのです。


 印象的なのは、急いでいる彼が制限速度を守っている点です。これは、彼が自分に厳しいという性格からも読み取れるが、実は愛人のもとへ行きたくないという心理を表現していると思います。彼は愛人の場所を「世界一行きたくない場所」と表現しています。そんな場所へケジメをつけるために向かう彼。好意的に見れるか、非難の目で見るか、それは経験・性別によっても変わると思います。一言で言えば、自業自得な話なのだが、彼の生き様を見てみたいと思わされる、そんな映画です。という事でお終い。ご愛読ありがとうございました。
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