真一

おんなのこきらいの真一のレビュー・感想・評価

おんなのこきらい(2014年製作の映画)
4.1
※不快表現あり。
ご注意願います。

 「カワイイ~♥️」と言われてちやほやされなければ、女の子じゃないー。男尊女卑のジェンダーロールを1000%内面化してしまった、可愛くて気の毒な女の子のラブコメディー。

 森川葵が演じる主人公の和泉キリコ、もう切なすぎる!それ、ハイカーストへの道じゃない!逆走してる!バカ男たちにモテようとするほど自分を傷つけ、惨めになるいう現実を全く理解できていないのが、つらい。

 でも気持ちは、分かる。この日本、女性が活躍できる職場なんて少ないし、バリバリ働いて結果を出せば、男たちから脅威とみなされて足を引っ張られるのが関の山だ。何の取り柄もないというコンプレックスを抱えるOLキリコが「若さだけが武器。社会を支配する男たちに可愛さで取り入るしかない」という、歪んだ「現実路線」をひた走ったとしても、誰が責められようか。

 そして、キリコの「カワイイズム」は他の女子との間に分断を生み、男たちはキリコをチヤホヤした後で、ヤり捨てた。結局、得したのはクソ男たちだった。「女卑システム」の頂点に立てば栄冠を手にできると大いに錯覚したキリコが、クソ男たちに大歓迎、大消費されたのは自明の理だった。

 もっとも、クソ男にもクソ男なりのクソな事情がある。自分のバブル時代の経験に照らせば、男たちは「女にモテなければ、男じゃない」というオスザル社会の論理(男尊システム)の下で、ローカーストへの転落を避けるために「アホな努力」を繰り広げていた。

 仲間の前で「夕べ、◯◯とヤっちまったよ(笑)」と自慢する風潮もあった。マウント取りであり、権力誇示だ。モテない男は笑い者にされた。「仕事ぶりは優秀で、女にだらしなくて、みんなに斜め上からテヘペロしちゃう、オス度高めの俺」。これぞ噂の「ニッポン男児」の本質なのかもしれない。

 そう言えば、連合艦隊司令官の山本五十六も、戦後の大政治家・大野伴睦も「女はぞろぞろいた。ワッハッハ」と自ら吹聴していたと聞く。炸裂するパターナリズム。「ニッポン男児」なんて、そんなものだ。

 「男は男らしく」「女は女らしく」という痛すぎる日本社会の通念に縛られ、カワイイ路線を突っ走り、弄ばれ、夜の公園で一人泣きじゃくったキリコ。「あの子、変わってたよね」では済まされない、本質的なジェンダー格差問題がキリコの迷走の背景にあるような気がした。 
森川葵さん、神演技‼️
最初は笑わされ、
最後は涙😢
素敵でした👏
真一

真一