センチメンタル・ジャーニー。
まさに「ダンディズムの象徴」というべきジェームズ・ディーンの最後の帰郷を、ダンディズムの映画監督であるアントン・コービンが撮っているのだから、映画は隅から隅までダンディズムの甘美な退廃と感傷に満ちている。
歩く、煙草を吸う、コンガを叩く。何気ない仕草ひとつひとつに漂う倦怠感。しかし、それは彼の最後を嫌でも思い起こさせるような不気味なものではない。故郷を離れて孤独に生きる若者の甘く切ない痛みだ。最後に繰り返される故郷を讃える詩の一節がそうした印象をより強くする。
ダンディズムに溺れることは心地いい。しかし、ダンディズムに溺れることを許さない現実の無慈悲が容赦なく描かれた『誰よりも狙われた男』を観てしまったあとでは、この甘さはどこか他人事のようにも思えてしまう。スターにさせられてしまうディーンの孤独やアーティストになれないデニス・ストックの焦燥よりも、バッハマン(フィリップ・シーモア・ホフマン)の「ファッッッッック!!!」のほうが、自分にとっては圧倒的なリアルなのである。