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消えた声が、その名を呼ぶのnaitのレビュー・感想・評価

消えた声が、その名を呼ぶ(2014年製作の映画)
3.6
恥ずかしながらアルメニア人が受けた迫害をこの作品見るまで知りませんでした。同じく迫害ものと言えば『シンドラーのリスト』に代表されるナチのジェノサイドが有名ですが、本作はそれ以前、第一次世界大戦最中に発生した事実が元になっています。

鍛冶屋だった主人公はある晩家族と引き離され、強制労働に従事させられる。戦況が悪くなったトルコ側(オスマン帝国)はこうして集めた囚人を言われもなく虐殺していく。主人公はすんでの所で生き延びるが、家族を捜し、8年という歳月をかけ西へ西へと旅を続ける…。

『娘を尋ねて3千里』というには重すぎる内容で、邦題が的確という稀なパターン。

映画を味わい深くしているのは、人間の本質というか汚い、嫌な部分を主人公を通じて描いていること。生きていくためには仕方がないとはいえ、盗みもやれば暴力も振るう。虐殺を生き延びた際に声を失ったことでもバカにされる。
それでも生き別れた家族と再会する為には文字通り【なんでもする】から自然と話に引き込まれる。

作り手が映画というメディアに込めた思いを端的に表現するシーンが秀逸。チャップリンのキッド(だと思う)を観て自分の中にある家族への思いを再認識する、このシーンが秀逸でした。
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