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さよなら、人類のsayakoのレビュー・感想・評価

さよなら、人類(2014年製作の映画)
4.6
絶妙で心地よい違和感と、画面に散らばる無数の種を拾い上げるべく繰り返し同じシーンを観たくなる。

死にまつわる話の憎めない親近感と、人類にまつわる残虐さ。ほの温かく、柔らかくて掴みどころのない物体の中に隠された鋭利なナイフのような。

言葉はあくまでも具体化した気付き(或いは誤解ない意識)を届ける為の装飾に過ぎず映像が全てだった。それぞれの役割の持たせ方が凄い。

全ては循環していて生活が地続きであること、街そのものを捉える感覚がかなりグッときたし、意味深でいて哲学的でアイロニカルなバランスが良い。クロスワードパズルみたく、点在する要素が繋がる展開も好き。

久々に好きな映画を観た、って感じ。

追記
ゴダールが云う「強制収容所に関する映画、ただしいわば拷問者の側から見た映画を作りたい〜中略〜そのようなシーンが堪えがたいのは、それ自体のおそろしさのせいではなく、反対に、それらの完全に正常で日常的な様相のせいなのだ(『ゴダールの世界』竹内書店)」は、この映画の恐ろしさ(ナイフの箇所に当たる)で体現されているのではないか、と思った。
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