Chico

あやつり糸の世界のChicoのレビュー・感想・評価

あやつり糸の世界(1973年製作の映画)
5.0
シンプルにめちゃくちゃ面白い。

マトリックスやインセプションに数十年先駆けて製作された、多層構造の仮想現実世界を描いたSF作品。

2部構成になっており上映時間は合わせておよそ3時間半。長編ですがもともとはドラマシリーズなので、途中休憩挟みながら観ても問題ないと思います。

ニュー・ジャーマン・シネマを代表するファスビンダーの作品ということでアート寄りのシュールなものを予想してたけど違った。

彼の作品にみる独特のリズムやへんてこな振る舞いは健在ですが、SF作品においてはそれらは不思議な世界観を作るのに効果的に働いていて、きちんとエンターテイメントに昇華されていた。

謎を説きながらストーリーを追っていく楽しみがスポイルされてしまうのであらすじは知らないほうが良いと思いますが、とっかかりとして以下。

サイバネティック未来予測研究所でシュミラクロンというスーパーコンピューターが開発される。そこでは開発者、フォルマー教授を中心として、人口的に作られた仮想世界の研究が進められていた。ある日フォルマー教授が謎の死を遂げ、研究所の所長ジキンスはその後任としてフレッド・シュティラー(主人公)を任命する。パーティーでシュティラーは保安課長のラウゼから教授の死について話を聞こうとする。ところがその瞬間、ラウゼが忽然と姿を消す。その謎を追い始めたシュティラーの周りで次々と奇怪な現象が起こり始め…

自身メモ。見所:
・CGを使わずに様々な手法を駆使して作られた世界観。
・象徴的に鏡や反射を利用した演出とそのカメラワーク
・SFにマッチした70年代のレトロ感
・無機質だけど魅惑的な女性たち。(ファスビンダーが描く女性は妖しくて可憐で美しい)
・物語の背景にある思想。
・ファスビンダー先生(勝手にそう呼んでる)名台詞多い。ドライでシンプルだけど響く。
・主人公のアクション
・どこかコミカルで時々大げさに見える登場人物の振る舞い。

そもそも何故そんな世界を研究対象にしたのかって所はもう少し掘り下げて描いて欲しかったけど、まあそんなことはどうでも良くなる
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