あやつり糸の世界の作品情報・感想・評価

あやつり糸の世界1973年製作の映画)

Welt am Draht

上映日:2016年03月05日

製作国:

上映時間:212分

3.9

あらすじ

未来研究所では、仮想世界を作り出し未来社会を厳密に予測できる「シミュラクロン」の開発が進められていた。ある日、研究主任のフォルマー教授が謎の死を遂げ、シュティラー博士が後任に就く。やがてシュティラーは研究所で奇妙な事態に遭遇する。保安課長ラウゼが忽然と姿を消すと、エーデルケルンという別の人物が保安課長として存在しているのだ。やがてシュティラーは自らシミュラクロンによって仮想世界に入り込む実験を行…

未来研究所では、仮想世界を作り出し未来社会を厳密に予測できる「シミュラクロン」の開発が進められていた。ある日、研究主任のフォルマー教授が謎の死を遂げ、シュティラー博士が後任に就く。やがてシュティラーは研究所で奇妙な事態に遭遇する。保安課長ラウゼが忽然と姿を消すと、エーデルケルンという別の人物が保安課長として存在しているのだ。やがてシュティラーは自らシミュラクロンによって仮想世界に入り込む実験を行う。現実そっくりなコンピューターによる虚構の空間。そこでシュティラーは消えたラウゼの姿を見かける…。

「あやつり糸の世界」に投稿された感想・評価

とと

ととの感想・評価

4.0
おしゃれご夫婦が経営されている、デヴィド・リンチカフェこと、『カフェモノクローム』さんで教えてもらった『あやつり糸の世界』。ようやく手にでき鑑賞へ。

現実世界の市場調査の為に仮想社会を作りその中に仮想人間を活動させるのだが、主人公のシュテイラー博士は奇妙な事態に遭遇する...。
バーチャルリアリティSFとポストヒューマンSFの先駆け的なアイデアを扱った作品。

鏡の多様がとにかく凄かった。

映画のコンセプトは
『ダニエル・F・ガロイ(SF作家)の「模造世界」の構造を丁寧に解きほぐし、そこから人間の意識や感情についての表出の可能性を探ろうとする。それは単なるサスペンスドラマを超えた人間の存在の根源に関わるドラマ。』であるそう。

記憶や環境までもが何者かに仕組まれたものだとしたら、いったい何を信じたらいい?箱庭世界に主観的リアリティの崩壊を描いていて、観ている側の絶望感を隠せない。

古い作品ではあるが、
『TV映画の大衆性という一つの制約を使って、この世界への対峙の仕方をいわば玉虫色の希望で語るという実験を行ったのではないか。それがジャンル娯楽の体裁を整えた「あやつり糸の世界」という成果を生んだと思える。』という作品解説から、現代世界へにも響く作品となっていると思う。

自分が今いる世界や立場、思考や感情を常に正しいと決めつけることの恐ろしさ、無知さ、愚者さえも尊重できない民度の低さ。それぞれを疑い、考え、視野を広げようって思う。
どうしてそれが間違ってないと言える?
そういった思考法の知的訓練としても面白い作品だった。
キよ4

キよ4の感想・評価

-
近未来SF映画の怪作傑作
サイバー未来研究所ではコンピュータによる仮想世界を作り出しそこから未来予測をシミュレーションするシミュラクロンの開発を行っていた
前任のコンピュータ責任者のフォルマーの謎の死とフォルマーの重大な発見を伝えようとした同僚ラウゼの謎の消失
そして自分もこの世界もコンピュータが作り出した模造の世界なのか 狂人の妄想なのか 謎の迷宮に苦悩する後任の責任者シュティラー
のちのマトリックスやインセプションを連想させる幾重にも重なるヴァーチャルリアリティの多層世界
現実とは 存在とは何か
鏡とガラスを多用した近未来的インテリア 特に溢れんばかりの鏡の多用さに驚き
コンピュータ室の鏡の間なんてフリップ&イーノのアルバム ノープッシィフッティングのジャケットをつい思い出しちゃう
躍動する電子音の気持ち良さ
フリートウッドマックのアルバトロスの繰り返しにも癖になる
仮想世界に入り込む実験の時被るヘルメット状の意識転送装置が面白い
みんなウィスキーの飲み過ぎ笑
蹂躙

蹂躙の感想・評価

5.0
ストーリーは陳腐かもだけど、鏡やガラスの使い方、音楽、セットが全部かっこよかった。女の人も冷徹な感じでよい。

このレビューはネタバレを含みます

仮想現実を扱った先駆け的テレビ映画。
VR映画の源流といって良いかも?

一目でVRだと分かるトリッキーな髪型の女優が多数出演しており、主役がおチビで巨人の国にいるような映画。

哲学的で見ごたえアリなのだが、前後編は正直、長い。
CHEBUNBUN

CHEBUNBUNの感想・評価

4.0
【ファスビンダーかく語りき仮想世界論】
2016年に日本で公開されたニュー・ジャーマン・シネマの巨匠R.W.ファスビンダー幻の作品『あやつり糸の世界』。丁度、その頃就活時期で金がなく観に行くことが出来なかった。TSUTAYAにはDVDは置いておらず、Netflixでも配信されていないので、Amazonでブルーレイ買ってみました。

☆『あやつり糸の世界』あらすじ
時は近未来。仮想世界によって未来を予測させる「シミュラクロン」の開発が進んでいた。しかしある日、研究主任のフォルマー教授が謎の死を遂げる。後任としてシュティラー博士が就くのだが、保安課長ラウゼの失踪を期に彼の周りで怪奇現象が起き始める。原因を追求すべく、自らシミュラクロンを試すことにするが...

☆圧倒的仮想世界論
『マトリックス』や『インセプション』よりも先に、仮想世界理論を映画で表現していたファスビンダー。あのエメリッヒが本作に惚れ込んで『13F』を製作したらしい作品。

そこには圧倒的なSF論と仮想世界への深い洞察があった。まずSF論だ。未来世界、人々は裕福さを求め、合理的に合理的にと物事を進める。その末路が、異様に冷たい社会だ。インテリアはどれもかっこいいのだが、冷たい印象を受ける。人々の感情には情が失われており、全てが「規則なんで」というセリフを合言葉に進む。例え、誰かが不遇な死を遂げても、目の前で死んでも、誰も興味を抱かない。ただの情報として事務的に処理してしまう。コンピュータの情報以外を信用しない。一見すると現実離れしたような物語に見えて、これって現代社会、ってか日本がそうなのではと思うほどに不気味さを帯びている。

未来的なものはコンピュータしか出てこないのだが、それでも未来の映画だと思える所以はこの徹底したSF論による世界観作りにあると言えよう。

そして、本作の凄いところは、仮想世界に対して物凄く深い洞察力を持っているということだ。我々が生きる世界は仮想世界かもしれない。ただその事実を知れるのは仮想世界を知るものだけ。もし、我々がコンピュータに操られているとしたら、簡単に記憶や情報を操作されてしまう。そこからどうやって脱出すれば良いのか。仮想世界の外側の世界に出たプログラムは超人類になれるのか。知恵熱が出るほどに、我々の人生とは何かと揺さぶってきます。

中でも面白い考察は、中盤コーヒーの色について議論するシーンにある。コーヒーの色は?と訊かれたら、誰しも茶色ないし黒と答えるであろう。しかし、それはコーヒー=茶色と定義されているに過ぎない。我々の生きる世界の外では、コーヒー=紫と定義されている可能性がある。この言語の定義と人間の認識との間にある力学に唸らせられた。

かっこいい映像と共に3時間半楽しい仮想世界論を聞けた。これは買って正解だった。
dude

dudeの感想・評価

4.3
不思議な味わいが胸に残る作品。
鏡を使った多層的なショットなど、画面が常にかっこいい。突然大げさなズームがあったり、主人公の身体能力がやたらと高いのも楽しい。ノイズのような音楽も印象的。
しかし面白い娯楽作品ではあると思うのだが、いまいち自分が何に感銘を受けているのか判然としない。監督の他作品も観ていきたいので劇場公開かDVDの再販をしてもらえないだろうか...。
kumi

kumiの感想・評価

4.5

このレビューはネタバレを含みます

70年代初めに西ドイツで制作されたSF映画で
「マトリックス」「インセプション」の先駆けとなる
仮想・多層世界を見事に描き出している。

監督はライナー・ヴェルナー・ファスビンダー 。


↓ネタバレありますのでご注意↓
























第1部の初めの映像はベルトルッチ監督「暗殺の森」を思わせる
素晴らしき構図だったのですが、場面が進むにつれ
そこにそんな尺、必要?な箇所がちらほらと。
特に第2部(1&2 合計3時間ちょっと)は。

面白いと感じたのはバーチャル世界へ行って帰ってくるときの
大きなカギとなる公衆電話。そう、マトリックスと同じ。
あちら側にいる人からの電話を受けると、煙のように体が消え、
電話線の回路に吸い込まれて現実世界に意識が戻り、目覚める。

そして仮想世界にいる人物たちは
自分たちが【ニセモノ】であることを知らない。

知りすぎてしまったら最後、自分のデータは抹消され
最初から存在がないようにされてしまう。
現実社会も似たようなものだけれど。

、、、っとかなり深いところまで書いてしまったので
ここまでにしますが、ものすっごい皮肉なのかな、と
感じた箇所をひとつ。

仮想世界のほうが優雅で豪華な生活をしているのに
現実世界に戻ってきた途端、グレーの壁に無機質な家具、
服装もシンプルでつまらない。つまりダサイんです。

夢を見るためにも仮想世界では
理想の生活を作り出していたのかも。
和田

和田の感想・評価

4.0
長い
でも後世のSF映画に連なる映画って言われてるだけあって面白い映画だと感じた

鏡を使った演出がすごい多かった
会話のシーンなんかで後頭部を映しながらも鏡で表情が見えるのが印象的だった
翼

翼の感想・評価

4.6
鑑賞メモ。
半券に日付が書かれてなかった…orz

思っていた雰囲気SFではなく、二重三重構造を思わせる世界観。
「なるほど、これが起源か」と思いながら見ていました。
前後編だった気がするのですが記憶が定かではない。
ただ、時間は長かったはずなのに存外ドラスティックで逃亡やアクション、銃まで出てくるからなんかもうSFなんだけどポスターイメージとは違ってアクション映画だったような・・・。

いや普通にすごい面白かったです。
思い出すとシーンが多彩で飽きません。
オススメです。
去年、凄く評判は良かったけど見逃していた一本。
渋谷、アップリンクで鑑賞。

1973年に発表され212分という長さ、
ニュージャーマンシネマのライナー・ベルナー・ファスビンダー監督。
個人的にはこれだけで凄く観たくなる。

そして傑作SFでした。
SFらしい装置とか仰々しいことはないのだけど、
設定とか、テーマとかこれはもうSFなんですね。

物語がドンドン雰囲気を変えていくのが楽しい。
最初は謎だらけでアート的でもあり、それが哲学的な話になったかと思えばアクションになり、
そしてドイツ映画といえば、カリガリ博士に代表とされる様な、
誰が狂っていて、何がオカシイのか、観ている方もオカシな気持になっちゃう様な、精神世界への葛藤が実に見事。

オカシイのは自分か?世界か?
みたいな。

そして、世界の謎と平行して人間の悪事も描かれて、
空想話が実は現実で誰かに嵌められてるのかも、
というサスペンスを生み出し、
出てくる人、それぞれが強烈に怪しくなっていく。

カメラワークがグルグル登場人物を囲む様に回り、
それが妙に平衡感覚を狂わす。
カメラ写りこんじゃうくらい画面に出てくる鏡とか、
映画冒頭でも出てくるけど、鏡に写っているのは何だ?
と映画を通して問うてくる。

ちょっとね、最初主人公が誰か分かりにくいのがもったいないなぁとは思うんですけど、
これはもう凄い極上のSF映画でしょう。と思うのです。

観ていて背筋がヒヤリとする、実に怖い映画でした。
いやはや映画館から出たらそこは果たして現実なんでしょうかね。
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